研究課題
MDGAファミリータンパク質は特定の神経群に選択的に発現する遺伝子として我々が単離・同定したイムノグロブリンスーパーファミリーに属するGPIアンカー型のタンパク質であり、発現様式の異なるMDGA1とMDGA2の2種のファミリー分子よりなる。ヒトの遺伝学的解析からMDGA1/2遺伝子の変異が統合失調症や自閉症の発症と連鎖するという報告がなされ、また、Neuroliginファミリータンパク質と相互作用して、その機能を修飾し得ることが明らかとなったことから、MDGAファミリー分子群の変異がシナプス形成や行動にどのような影響をもたらすかをノックアウトマウスを用いて検証することとした。MDGA2ノックアウトマウスのホモ体は、バッククロスの進行に伴い生後致死となったため、明瞭な表現形が認められないことが想定されたものの、まずはヘテロ体での解析をおこなうこととした。その結果、ヘテロ体において、社会性行動の異常が明瞭に観察されるとともに、電気生理学的な解析からは、興奮性・抑制性シナプス形成のバランスが片寄ってしまっていることが示唆された。これらのことから、MDGA2は興奮性・抑制性シナプスの形成バランスの制御に深く関与しており、その機能異常が、自閉症などの精神疾患の発症につながりうることが想定された。
2: おおむね順調に進展している
MDGA2ノックアウトマウスにおける自閉症様の社会性行動異常とシナプス形成バランス異常を明らかにできたのは大きな進展であり、当初の計画以上といえる。しかしながら、前任地から現任地へのマウスの移動に伴いIVFによるクリーンアップを行わねばならなかったため、ホモ体を用いたMDGA1ノックアウトマウスの解析が滞ってしまった。このため、現在までの達成度としては表記の区分とした。
MDGA2マウスの解析をさらに進めるとともに、ホモ体の作出を進めてMDGA1マウスの解析を再開する。また、これらの解析結果から、MDGAファミリー分子群は、統合失調症・自閉症といった精神疾患の治療に向けた新たな分子標的となり得ることが想定される。そこで、MDGAファミリータンパク質の創薬シーズとしての有用性を検討するために、MDGA-Neuroligin間の相互作用を修飾しうる薬物をスクリーニングするシステムの構築を試みる。
MDGA1マウスの解析が、マウス移動の際のクリーニングなどにより中断されたため。
MDGA1マウスの解析は次年度再開予定であり、その遂行に必要な経費として使用する計画である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
J. Biol. Chem.
巻: 290 ページ: 987-995
10.1074/jbc.M114.599852.
J Alzheimers Dis.
巻: 39 ページ: 861-870
10.3233/JAD-131610.
Mol. Biol. Cell
巻: 25 ページ: 3569-3580
10.1091/mbc.E14-06-1111.