研究実績の概要 |
歯周病の主な原因菌Porphyromonas gingivalis (ジンジバリス菌)は嫌気性細菌であるため、歯と歯茎の間である歯周ポケットに侵入し, 歯周組織を破壊する。その結果として歯周ポケットは炎症を起こす。その際, ジンジバリス菌は放出されたヘモグロビンの鉄イオンを摂取し, それを栄養素の1つとして増殖に利用していると考えられている。これまでに,脱脂大豆を培地として麹菌を固体培養すると, 麹菌がジンジバリス菌のつくる毒素ジンジパイン(GP)に対する阻害物質(GP inhibitor)をつくることを明らかにした。そこで, 本研究では, GP inhibitorが, ジンジバリス菌へのヘモグロビンの結合能に影響を及ぼすか否か調査した。その結果, ジンジバリス菌とヘモグロビンとの結合阻害率は, 培地として用いた脱脂大豆エキスに比べ, 脱脂大豆麹エキスの方が有意に高かった。この結果から, 脱脂大豆麹に含有されるGP inhibitorが, ジンジバリス菌へのヘモグロビンの結合を阻害することを示唆される。一方, GP inhibitorは, 熱安定性が高いことから, 食品素材(パン生地)に対し, 醤油原料(脱脂大豆+小麦)に麹菌を摂取し得られたエキス(醤油麹エキスと呼ぶ), もしくは脱脂大豆に麹菌を摂取し得られた脱脂大豆麹エキスのいずれかを添加してパンを製造し, そのパンに含まれるGP 阻害活性を調べた。その結果, 脱脂大豆エキスと比べ, 醤油麹エキスの方が、その活性は高いことが実証された。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の研究により、醤油及び脱脂大豆原料を用いて麹菌Aspergillus. oryzae S-03を固体培養することによって得られる麹エキスによる, ジンジバリス菌へのヘモグロビンの結合阻害機構を明らかにする。口腔上皮細胞にジンジバリス菌の菌体を作用させると, 炎症性サイトカインであるIL-6やIL-8等の産生が誘発されて, 病変は拡大する報告がなされている。今後(平成27年度)は, 醤油及び脱脂大豆麹エキスがジンジバリス菌の刺激により, 歯肉上皮細胞から産生されるIL-8を阻害するか否かを検証する。
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