研究課題/領域番号 |
25460181
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
長野 基子 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (90304089)
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研究分担者 |
斎藤 あつ子 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00223131)
大森 志保 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (90379488)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / マラリア原虫 / 肝特異的発現タンパク質 / 細胞障害 / Circumsporozoite protein / ETRAMP13 |
研究実績の概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染の治療の進歩は目覚ましい。現在、インターフェロンフリーでHCVタンパク質を直接標的とするDAA(direct acting antivirals)の経口投与や従来のペグインターフェロンとリバビリンに加えDAAを併用する治療法が実施されている。DAA薬剤のみによる治療の著効率は、治験では90 %後半とのことであったが、患者背景は多岐に渡るため実臨床での著効率はそれよりも低いこと、これら薬剤に耐性を示す遺伝子配列を持つHCVには有効な治療薬がないこと、経口薬は大変高価なため使用しにくい患者が日本や世界には非常に多くいることなどの状況を鑑みると、これまでと異なる発想に基づくHCV治療薬の開発が必要であると考える。 本研究は、マラリア原虫が肝細胞に寄生する間、肝細胞に明確な病変を起こさないことに着目し、マラリア原虫肝細胞期発現タンパク質の肝細胞環境修飾作用の可能性を考え、マラリア原虫肝細胞期発現タンパク質がHCVの複製やHCVによる肝細胞障害・細胞がん化に影響を及ぼすかどうかを検討するものである。 本年度、HCVレプリコン細胞にマラリア原虫肝細胞期発現タンパク質のCircumsporozoite protein及びETRAMP13を原虫コドンを用いて一過性に発現させHCVタンパク質の発現に及ぼす影響を検討したところ、明白には発現の抑制は確認できなかった。現在、これらマラリア原虫タンパク質の発現量の影響を詳細に調べるため哺乳動物細胞の翻訳に適したコドンを用いた一過性および恒常性発現系を用いて、HCV タンパク質の発現量の変化を検討中である。HCV複製への影響についても検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
熱帯熱マラリア原虫K-1株や3D7株のゲノムからPCRによって肝細胞期発現タンパク質遺伝子をクローニングしてきたが、アミノ酸置換エラーの挿入が何度も起きた。また、遺伝子配列は問題がないにも関わらずタンパク質発現レベルが低いなどマラリア原虫タンパク質発現システムの構築に予想以上の時間を要した。そのため当初3年間の予定研究期間の延長が必要となり「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
HCVレプリコン細胞に、哺乳動物細胞の翻訳に適したコドンを持つマラリア原虫Circumsporozoite protein遺伝子やETRAMP13遺伝子などのマラリア原虫肝細胞期発現タンパク質を遺伝子導入し、対照細胞と比較しながら、HCVタンパク質の発現やゲノム複製が抑制されているかを詳細に検討する。また影響を受けていることが明らかになれば、その分子機序を調べる。また、HCVレプリコン細胞にマラリア原虫が感染した場合、HCVタンパク質の発現やゲノム複製が影響を受けるかどうかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マラリア原虫Circumsporozoite protein遺伝子やETRAMP13遺伝子をPCR法によりクローニングし、実験に供する予定であったが、アミノ酸置換の挿入、タンパク質発現レベルが低いなどの問題が起こり、解決に時間を要したため、今年度予定していたこれらマラリア原虫タンパク質がHCVレプリコン細胞における細胞障害に及ぼす影響の検討やHCVタンパク質の発現やゲノム複製への影響の解析に遅れが出た。そのため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
HCVレプリコン細胞を用いて、HCVによる細胞がん化や細胞障害に関わる事象、及びHCVタンパク質の発現やゲノム複製が、マラリア原虫Circumsporozoite proteinやETRAMP13などの肝細胞期発現タンパク質により影響を受けるかどうかを検討するための必要物品等の費用に充当する予定である。
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