研究課題
基盤研究(C)
近年、ヘルパーT細胞分化のマスター転写因子としてThPOKが同定された。ThPOKはZinc fingerを持つ転写因子で、Zinc fingerに変異があるマウスならびにThPOKを欠損するマウスはヘルパーT細胞を有さないことから、ヘルパーT細胞分化に必須であることが知られている。さらに、ThPOKを欠損するMHC class II 拘束性ヘルパーT細胞様細胞では機能が著しく低下することから、ThPOKがヘルパーT細胞機能発揮に重要な役割を果たしていることは明らかである。しかしながら、ThPOKの標的遺伝子は未だ不明である。したがって、申請者はThPOK標的遺伝子を探索することによりヘルパーT細胞機能発現機序の解明が可能となると考え、ThPOK転写因子の標的遺伝子の同定をcDNAマイクロアレイとChIP on chip法により行った。探索の結果、ThPOK標的遺伝子候補の中でヘルパーT細胞では発現が認められず、しかし、細胞障害性T細胞で発現が見られ、さらにThPOK欠損T細胞でも発現が見られる遺伝子(ThPOKにより発現が抑制される遺伝子)に注目し、Cxxc5遺伝子を選んだ。T細胞特異的に標的遺伝子Cxxc5を発現するトランスジェニックマウスを作成し、その表現型を調べたところ、CD40L発現低下ならびにIL-4産生減少等のCD4+ヘルパーT細胞の機能が著しく低下していることを見出した。それら遺伝子の発現抑制機序を調べたところ、それら遺伝子座においてHistone H3の9番目のリジンがメチル化されていること、さらにCxxc5がHistone methyltransferaseのSuv39h1/2と結合していることが明らかになった。一方、Cxxc5はCD40LならびにIL-4遺伝子座のDNAのメチル化に関与していなかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究においてCxxc5がCD40LならびにIL-4発現抑制の機序を明らかにすることが大きな目的の一つであるが、その機序の一部を明らかにすることが出来たことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
Cxxc5がHistone methyltransferaseのSuv39h1/2と結合しHistone H3 9番目のリジンのメチル化を誘導しCD40LならびにIL-4の産生を抑制することを明らかにした。今後、他のHistone修飾の検討を行い遺伝子発現の抑制ならびにヘルパーT細胞機能抑制の機序を明らかにする。さらにCxxc5欠損マウス、ThPOK欠損マウスを用いて詳細な機序の検討を行う予定である。
実験に必要なCxxc5欠損マウスならびにThPOK欠損マウスを導入したが、それらマウスが仔を産まなかったことから、動物実験を行うことが出来なかった。そのため、次年度使用額が生じた。仮親を導入することにより安定にCxxc5ならびにThPOK欠損マウスを得ることが可能となった。これら動物を用いた実験に次年度使用額を使う予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
FASEB J
巻: 27 ページ: 4940-4953
10.1096/fj.13-233528
Adipocyte
巻: 2 ページ: 227-236
10.4161/adip.25608