研究課題/領域番号 |
25460531
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
児玉 年央 大阪大学, 微生物病研究所, 講師 (20346133)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸炎ビブリオ |
研究実績の概要 |
本研究では腸炎ビブリオのVopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導機構を明らかにすることを目的としている。前年度までに、VopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導には、TDHの溶血活性が必要であることが明らかとなっている。そこで、本年度はこの下痢誘導機構に寄与するエフェクターの同定を試みた。 申請者はこれまでに、T3SS2の既知および新規エフェクターを合わせて12種類同定している。そこで、vopV遺伝子欠損株からそれぞれのエフェクター遺伝子欠損株を作製し、作製した遺伝子欠損株にtdh遺伝子を相補した株を作製し、それらの下痢誘導活性をウサギ腸管結紮ループ試験で評価した。その結果、tdh遺伝子相補によって、全てのエフェクター遺伝子欠損株において下痢誘導活性が回復した。一方、T3SS2遺伝子欠損株およびvopD2遺伝子欠損株にtdhを相補した株では、そのような回復は認められなかったことから、VopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導に寄与する未知のエフェクターの存在が考えられた。 次に、未知エフェクターの同定のための培養上清プロテオーム解析の条件検討を行った。条件検討の過程で、申請者は胆汁酸(T3SS2遺伝子群の発現誘導物質)の非存在下にもかかわらず、T3SS2エフェクターの培養上清中の分泌量が上昇する変異株を得ることに成功した。現在、この株の培養上清のプロテオーム解析を行うことで、VopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導に寄与する新規T3SS2エフェクターの同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、12種類のT3SS2エフェクター遺伝子欠損株の作製およびそれら遺伝子欠損株にtdh遺伝子を相補した株の作製とそれらの株の下痢誘導活性をウサギ腸管ループ試験で評価する必要があった。しかしながら、12種類のT3SS2エフェクター遺伝子欠損株のうち、いくつかの欠損株を得ることが困難であったためノックアウトベクターの再構築をする必要が生じた。よって、当初の計画より遺伝子欠損株の作製に時間を要した。さらに、それらの株の下痢誘導活性を評価するウサギ腸管結紮ループ試験で安定した結果を得るために多くの再現性実験が必要となった。そのために当初の研究計画よりやや進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られたT3SS2エフェクターの培養上清中の分泌量が上昇する変異株の培養上清のプロテオーム解析を行うことで、VopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導に寄与する新規エフェクターの同定を試みるとともに、それらのエフェクターとTDHとの協調作用機構の解析を進める。 また、T3SS1,T3SS2遺伝子二重欠損株とtdh,T3SS1,vopV遺伝子3重欠損株もしくはtdh,T3SS1,T3SS2遺伝子3重欠損株とを共感染させた時の下痢誘導活性を評価し、VopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導機構に関与する、T3SS2エフェクターの必要性について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より遺伝子欠損株の作製に時間を要し、結論を導き出すまでに時間を要した。その結果、次に行う予定であった新規エフェクターの同定を年度内に終えることができず、そのための予算を年度内に使うことができなかった。また、キャンペーンの等の値引きにより必要物品額が当初の計画より若干減額した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度予算と合算させ、TDHとT3SS2の機能的相互作用の解明に必要な物品や実験動物の購入および論文校閲、投稿費に充てる予定である。
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