研究課題
本研究では腸炎ビブリオのVopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導機構を明らかにすることを目的としている。この下痢誘導機構にはTDHの溶血活性が必要であった。しかしながら、抗TDH抗体で中和することができなかった。また、tdh/T3SS1/vopV遺伝子欠損株の下痢誘導活性はT3SS1/T3SS2遺伝子欠損株との共感染によって回復しなかった。さらに精製TDHの下痢誘導活性はtdh/T3SS1/vopV遺伝子欠損株の感染によって増強しなかった。このように共感染系によるTDHの協調的下痢誘導作用は認められなかった。そこで次に、この下痢原性に寄与するエフェクターの検索を試みた。まず、既知および新規エフェクターを合わせて12種類のT3SS2エフェクターの関与について、ウサギ腸管結紮ループ試験で評価した。その結果、いづれのエフェクターの関与も認められなかった。そこで、未知のエフェクターの関与が考えられたことから、培養上清をプロテオーム解析することにより同定を試みた。条件検討を行う過程で、胆汁酸(T3SS2遺伝子群の発現誘導物質)の非存在下にもかかわらず、エフェクターの分泌が増大する変異株が得られたことから、この株の培養上清のプロテオーム解析を試みた。その結果、新規のエフェクター候補、1遺伝子を得た。この遺伝子にはアミノ酸配列上、機能を推測出来るようなモチーフは無く、機能未知の遺伝子であった。今後、この遺伝子がVopV非依存的、TDH-T3SS2依存的下痢誘導機構に寄与する可能性について検討するために、遺伝子欠損株を作製し、T3SS2の分泌能に与える影響や下痢誘導活性に与える影響について検討を行っていく予定である。
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