研究課題/領域番号 |
25460943
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
勝野 達郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10343089)
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研究分担者 |
中川 倫夫 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40396677)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管粘膜上皮 / バリア機能 / TER / claudin-2 / IL-6 / IL-10 / グリシン / グルタミン |
研究概要 |
消化管粘膜上皮のバリア機能は重要な生理的機能であり、クローン病患者ではバリア機能が低下していると言われている。我々は、抗TNFα抗体製剤で加療中のクローン病患者では、アミノ酸含有経腸栄養製併用により臨床効果が高まることを見いだした。そこで、本研究では腸管粘膜上皮バリア機能を増強させるアミノ酸の同定・作用機序の解明を行った。 まず、無血清化したT84大腸上皮細胞層の基底膜側からIL-6あるいはIL-10を添加しバリア機能の変化を観察した。IL-6添加により、TER (transepithelial electrical resistance)は control(100%)と比較して優位に低下した(87±0.6%)。一方、IL-10添加によりTERは増加した(124±5.6%)。IL-6添加により、選択的にclaudin-2蛋白量が増加していた。次に、上記の系に対して、20種類のアミノ酸(pH=7.4、2mM)を個々に添加しTERの変化を観察した。その結果、グリシンおよびグルタミン添加時にのみ、TER値は、サイトカイン無添加群でそれぞれ118±0.1%, 116±2.6%、IL-6添加群で100±1.8%, 97±2.1%、IL-10添加群で150±10%, 140±7.5%と、いずれの群においても有意に増加した。また、グリシンおよびグルタミン添加によりいずれの群においても選択的にclaudin-2蛋白量が有意に抑制されていた。 以上より、大腸上皮細胞層において、炎症性サイトカインはclaudin-2蛋白を選択的にup-regulateし TERを抑制しバリア機能を低下させるが、グリシンおよびグルタミンは、逆にclaudin-2蛋白を選択的にdown-regulateしTERを上昇させバリア機能保持に働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね、初年度の研究の目的は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
該当アミノ酸がtight junction関連蛋白の遺伝子発現に対する影響をPCR arrayを用いて網羅的に解析し、該当アミノ酸がバリア機能に与える作用を、遺伝子発現の観点から明らかにし、作用pathwayを明らかにする。 また、実際のクローン病患者の腸管粘膜上皮の状態を明らかにするために、クローン病患者の病変部位の粘膜から生検を行い、PCR arrayを用いてtight junction関連蛋白の遺伝子発現を健常部と比較する。ヒトでは24種類のclaudin遺伝子を有することが分かっており、バリア機能を正に制御するもの、負に制御するものがある、claudin遺伝子発現バランスと病理学的活動性、内視鏡的活動性、臨床的活動性、予後との相関を多変量解析する。 さらに、アミノ酸含有経腸栄養療法施行によりtight junction関連蛋白の遺伝子発現および蛋白発現量が変化するかを、経腸栄養療法施行前後のクローン病患者の病変部位の粘膜から採取した標本を用いてPCR arrayにより網羅的に検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ばらつきの少ないデータを得ることが出来たため、細胞培養液、FBS、アミノ酸などの試薬の購入コストを抑えることができた。 研究計画の次の段階であるPCR array施行のための試薬購入に用いる。
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