研究課題/領域番号 |
25460943
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
勝野 達郎 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 准教授 (10343089)
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研究分担者 |
中川 倫夫 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40396677)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管粘膜上皮 / バリア機能 / TER / claudin-2 / IL-6 / IL-10 / グリシン / グルタミン |
研究実績の概要 |
本年度は主として臨床的検討を行った。アミノ酸を含有する経腸栄養療法の投与が、クローン病患者の長期的な寛解維持に意味があるかどうかを明らかにする臨床的検討を行った。具体的にはインフリキシマブにより寛解導入に成功したクローン病患者において、寛解維持の成否と、経腸栄養療法の有無ならびに臨床的特徴について検討した。 当院で2002年から2010年にインフリキシマブで寛解導入に成功し、かつ6か月以上の寛解維持ができたクローン病症例を対象とした。寛解維持群と二次無効群を2014年8月まで追跡調査して解析を行い、成分栄養療法の寛解維持への寄与、各群の臨床的特徴を明らかにした。 最終的な対象症例は74症例、平均観察期間 40.8カ月(5~143カ月)、男性/女性=56例/18例、平均発症年齢 23.7歳(13~53歳)、IFX使用までの平均罹病期間 91.4カ月(9~290カ月)、IFX平均開始年齢 31.2歳(18~60歳)、小腸型/大腸型/小腸大腸型=9名/14名/51名であった。寛解維持群は19名、二次無効群は55名であった。寛解維持群では、二次無効群に比し、1日600kcal以上の経腸栄養療法併用率が有意に高かった(p=0.0229,Log-rank test)。経腸栄養療法以外には寛解維持成功因子は見いだせなかった。従って、この12年間のコホート研究で、アミノ酸を含有する経腸栄養療法(1日600kcal以上)の併用が、インフリキシマブ投与クローン病患者の寛解維持に有効であることが示された。 前年度のin vitroの結果、および本年度の臨床的結果から、アミノ酸を含有する経腸栄養療法がバリア機能を強化することにより有意に寛解維持成功率が高くなったとの仮説を設定し、現在、特定のアミノ酸が腸管上皮tight junctionの遺伝子発現に与える影響を明らかにする実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、千葉大学環境健康フィールド科学センター・千葉大学柏の葉診療所長との兼務となり、診療所開所の準備作業に多くの時間を費やす必要があったため。
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今後の研究の推進方策 |
特定のアミノ酸が、腸管粘膜上皮バリア機能を強化するメカニズムを明らかにするために、in vitroでT84腸管粘膜上皮のtight junction関連蛋白の遺伝子発現していないか、PCR arrayを用いて網羅的に解析する。
また、クローン病患者の病変部位の腸管粘膜から生検を行い、腸管粘膜上皮のtight junction関連蛋白の遺伝子発現を明らかにするために、PCR arrayを用いて健常部と比較する。ヒトでは24種類のclaudin遺伝子を有することが分かっており、バリア機能を正に制御するもの、負に制御するものとがある。Claudin遺伝子発現の変化と、疾患活動性、内視鏡的活動性、経腸栄養療法の施行の有無という要素に相関が認められないか多変量解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
アミノ酸が腸管粘膜上皮バリア機能に与える作用のメカニズムを明らかにするために、腸管粘膜上皮を用いてアミノ酸添加によるmRNAレベルの発現変化の評価作業を行う必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、腸管粘膜上皮を用い、TER測定と、mRNAレベルの発現のチェックを行う。
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