研究課題
既存治療で効果不十分なクローン病に対しては、世界的に抗TNF-α療法が主流であるが、症例により効果減弱を来すことが問題になっている。我々は平成25~26年度に、臨床的に経腸栄養療法の併用が、短期的にも長期的にも抗TNFα療法の効果減弱予防効果を持つことを明らかにした。そこで、平成27年度は、上記のメカニズムをin vitroで裏付けるためにT84 大腸粘膜上皮細胞を用い、経腸栄養剤含有アミノ酸が上皮細胞層のバリア機能を強化するか検討を行った。我々は既にIL-6刺激により低下した大腸粘膜上皮細胞層のバリア機能が、glycineあるいはglutamine添加により回復し、valine添加では影響しないことを見出している。そこで今回、10 ng/mlのTNFα刺激によりバリア機能が低下したT84大腸粘膜上皮細胞層にglycineとglutamineをそれぞれ添加したところ、有意にバリア機能が回復することを見出した。Valine添加ではバリア機能に影響を与えなかった。上記の機序解明のために、glycineとglutamine添加がそれぞれtight junction構成蛋白遺伝子発現に影響を与えるかPCR arrayにより検討した。T84大腸粘膜上皮細胞に対する10 ng/mlのTNF-α刺激により、ICAM-1とICAM-2の遺伝子発現が有意に増強され、既報の如く、これがバリア機能の低下原因の一つと推定された。Glycineあるいはglutamineの添加は、ICAM-1とICAM-2の遺伝子発現には影響を与えなかったが、glutamine添加群では、claudin-14遺伝子の発現が有意に上昇しており、バリア機能の維持に寄与するものと推定された。しかし、glycine添加ではtight junction 構成蛋白の遺伝子発現に有意な変化は認められなかった。そこで、アミノ酸の主たる作用機序はtight junction 構成蛋白の遺伝子発現制御ではなく、蛋白の分解制御やリン酸化制御にあることが示唆された。
すべて 2015
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)