メタボリック症候群においては体内に脂肪組織が過剰な蓄積、骨格筋量の絶対的、または相対的減少により、脂肪組織量と骨格筋量の不均衡(肥満サルコペニア)が生じ、全身のインスリン抵抗性を引き起こす一因となっている。脂肪細胞と筋細胞の機能を同時に制御する新規蛋白を探索するため、レンチウイルスshRNAライブラリーを用いたスクリーニングを行い、膜蛋白Transmembrane protein 97 (Tmem97)を同定した。Tmem97は、脂肪細胞の分化を抑制し、筋細胞の分化を促進する。全身性Tmem97欠損マウスにおいては、高脂肪食下で野生型マウスと比較し、インスリン抵抗性の改善を認めた。また、脂肪細胞と骨格筋におけるインスリン感受性に対する影響を検討するため、Ap2プロモーターを用いて脂肪細胞特異的Tmem97トランスジェニックマウスを、HSAプロモーターを用いて骨格筋特異的Tmem97トランスジェニックマウスを作成した。これらのマウスに高脂肪食負荷を行うと、野生型マウスと比較し、インスリン抵抗性が悪化した。以上の結果から、Tmem97は、生体内において脂肪細胞と骨格筋で、インスリン感受性の調節に関与している可能性があると考えられる。現在、Tmem97がインスリン抵抗性を誘導する分子機構について検討中である。Tmem97の機能解析を通して、メタボリック症候群の新規治療応用の開発を目標にしている。
|