研究課題
基盤研究(C)
自ら開発した新モデル「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」はB6バックグラウンドであったので、17か月かけてBalb/cバックグラウンドに改変した(新・新マウス)。本研究では、このSLE動物モデルにおいて「自己抗体産生B細胞」がどのように制御されているかを明らかにし、「自己抗体産生B細胞」を特異的に抑制するSLEの新治療法を目標としている。初年度は新モデルの表現型を調べた。B6バックグラウンドの「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」は28週齢で80%において蛋白尿が観察されたが、Balb/cバックグラウンドの「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」は16週齢で80%において蛋白尿が観察され、より早期から高率に蛋白尿が出現することがわかった。IgG型の抗DNA抗体はB6バックグラウンド、Balb/cバックグラウンドともに、比較的弱い価でしか検出できなかった。サブクラスを変えて再検討する予定である。それぞれのバックグラウンドの「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」にエストロゲンまたはプラセボを投与した。蛋白尿とIgG型抗DNA抗体が発現したが、エストロゲンとプラセボの間で有意な差を認めなかった。マウスをサクリファイスして脾臓のB細胞分画を調べたところ、自己反応性B細胞と関係が深い辺縁型B細胞(marginal zone B cell)の割合が増えていた。エストロゲンがB細胞の成熟に影響していることが確認できたが、最終的なSLE動物モデルの蛋白尿などの表現型に大きな差は認めなかった。今後、その原因を検討する予定である。過去の我々による検討により、本ノックインマウスモデルのホモ接合型では、脾と骨髄のB細胞数が減少することを確かめている。すなわち、自己反応性のB細胞はクローン選択において排除されていると考えられる。本モデルにおいてB細胞が選択・排除されているメカニズムをさらに調べることによりSLEの病態解析につながることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画としていた、遺伝子改変マウスの表現型の解析を進めることができたため。
疾患を引き起こすB 細胞の特性を知るために、糸球体腎炎を発症したBalb/cバックグラウンドの「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」のB 細胞がどのように腎に浸潤しているかを蛍光免疫染色で観察し、非発症マウス(WTマウス)と比較する。蛋白尿が出現したマウスをサクリファイスし、腎を採取して蛍光免疫染色でB 細胞の分布および各細胞表面マーカーの発現を観察する。腎症を発症したBalb/cバックグラウンドの「抗DNA抗体遺伝子ノックイン・マウス」腎組織B 細胞の発現遺伝子を、非発症マウス(WTマウス)腎組織B 細胞の発現遺伝子と比較することにより、腎炎発症に重要な分子を検索する。初年度に引き続き、主にマウスの飼育やgenotyping、フローサイトメトリー(抗体、消耗品)などに研究費を当てる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Lupus
巻: 23 ページ: 386-94
10.1177/0961203314523870