研究課題
平成26年度の研究の到達目標地点は、「小児血管腫・リンパ管腫に対するプロプラノロール療法の有効性と安全性に関する臨床研究」の成果をまとめることである。6ヶ月をプライマリーエンドポイントとし、有効性と有害事象の評価を行う。有害事象については血圧、脈拍、血糖など統計学的な解析を行う。目標症例は40例(リンパ管腫が10例以上)であったが、2015年3月現在、51例(乳児血管腫34例、リンパ管腫6例、その他の脈管異常11例)が登録されている。乳児血管腫に対する治療効果は色、大きさをVisual Analogue Scale (VAS)、客観的指標を用いて評価し、3か月で約50%、6ヶ月で約80%の改善率が得られている。有効性について、治療開始時月齢(6ヶ月未満、6ヶ月以上)、病型(表在型、腫瘤型)、病変部位(頭部と頭部以外)とで分けてtwo-way ANOVAで解析したが、差はみられなかった。その他のリンパ管疾患に関しては、病状によって評価項目が異なるが、それぞれ有効性を認めていた。有害事象は、2例、感染症時に気管支喘息を発症した。また病態に関連するといわれる血漿中VEGF、bFGFなどの血管新生因子の測定を治療前、治療後4,8,12,24週後にELISAで測定し、t-testで解析した。治療前の評価では、コントロールは同意の得られた小児健常者30例と比較して、乳児血管腫患者は有意に高かった。また腫瘤型は表在型と比較して有意に高かったが、開始時年齢、病変部位に違いはみられなかった。腫瘍体積および月齢とVEGF値の相関をみたところ、腫瘍体積が大きいほどVEGF値は高い傾向がみられた。治療後4週目ではVEGF値は有意に低下したが、その後は有意な変動は無かった。腫瘍体積は治療後に経時的に縮小するが、VEGFはそれと関係なく、治療後は常に低値であったため、プロプラノロールの薬理作用によって腫瘍からのVEGF産生を抑制している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
臨床研究目標症例は40例(リンパ管腫が10例以上)であったが、2015年3月現在、51例(乳児血管腫34例、リンパ管腫6例、その他の脈管異常11例)が登録され、登録としては順調である。また全例とも予定研究期間を超え、現在フォローアップを行い、解析可能な状態である。もうひとつの平成25年度の目標としては、症例のELISA解析であった。最も重要と考えられたVEGF値に関しては測定し、解析済であり、予定通りである。これらに関しては、平成26年度の日本皮膚科学会、日本小児血液がん学会で発表した。
平成27年度は、①臨床研究の治療効果を論文報告すること、②ELISAを用いた研究の解析結果を論文発表すること、③他のサイトカインを測定すること、④患者から得られた細胞株を用いた基礎研究を行うこと、である。
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Pediatr Int.
巻: 56 ページ: 37-40
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小児外科
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