研究課題/領域番号 |
25461702
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
金蔵 拓郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70177509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CD147/basigin / ERシグナル / オートファジー / EGFR |
研究実績の概要 |
我々は過去にCD147/basiginはアポトーシスから腫瘍細胞を保護する作用があることを報告した。CD147/basiginが細胞防御機構に関与することで腫瘍細胞の生存調節因子として機能している可能性を考え本研究を計画した。 CD147/basiginを高発現している悪性黒色腫細胞を対象とした。まず野生型細胞とCD147/basiginをノックダウンした細胞で、ERシグナルのkey moleculesであるXBP1, eIF, CHOP, オートファジーを反映する LC3の発現あるいは活性化の程度を比較観察したところ有意の差異は認められなかった。そこで視点を変えて細胞生存に重要なチロシンキナーゼ群の分子との関連を検討した。CD147/basiginと結合するチロシンキナーゼを検索したところ、悪性黒色腫の増殖に関与することが知られているERBB3 (human EGFR)が結合することがわかった。悪性黒色腫の約70%ではEGFRの下流の分子であるBRAFに遺伝子変異がみられ、EGFR-BRRF-MAKの径路が恒常的に活性化しており、新たな分子標的薬vemurafenibは変異BRAFを標的としている。 EGFRもCD147/basiginも黒色腫細胞の増殖を促進させるが、予想に反してCD147/basiginをノックダウンするとEGFRのリン酸化は亢進した。これはCD147/basiginのノックダウンによりEGFRに対して抑制性に作用するcdc25Cと、そのリン酸化を調節するMEKのリン酸化が抑制されるためであることを明らかにした。この知見は生存シグナル間にクロストークが存在すること、及びEGFRとCD147/basigin双方を抑制することでより効果的に腫瘍細胞の増殖を抑制できることを示しており、将来的に治療成績の向上につながる成果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はCD147/basiginの腫瘍細胞の生存調節因子としての機能の解明を目的として本研究を計画した。特にアポトーシス、ERシグナル、オートファジー等の調節に重点を置いて研究計画を立案した。ERシグナル、オートファジーに関しては有意な結果は得られなかったが、CD147/basiginが悪性黒色腫細胞の生存調節に重要な役割を果たすEGFRの発現を抑制性に調節しているという新たな事実を発見することができた。またその機序について解明した。この成果は「研究実績の概要」に記したように、今後悪性黒色腫の治療成績の向上につながる貴重なものである。
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今後の研究の推進方策 |
我々のこれまでの研究でCD147/basiginが悪性黒色腫細胞の増殖に関して重要な役割を果たしていることが明らかになった。過去の成果を含めて本研究で得られた知見を基にCD147/basiginを悪性黒色腫の治療に応用するための研究を推進する。まずマウスモデルを用いたin vivoの実験を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の残額を充当したため、使用計画通りに支出がなされなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は当初計画書通りに予算を執行する。
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