研究課題
我々は過去にCD147/basiginは細胞膜タンパクの正常な発現をサポートするシャペロンとして機能することを明らかにしてきた。すなわちCD147をノックダウンした細胞ではモノカルボン酸トランスポーター、p-糖タンパクなどの膜タンパク質が正常な高次構造を成さず細胞質内に留まる。これらの異常タンパクが細胞へのストレスとなりERシグナルやオートファジーなど細胞防御機構が活性化する可能性を仮定し、CD147の腫瘍細胞の生存調節因子としての機能を解明する目的で本研究を計画した。CD147を高発現している悪性黒色腫細胞を対象とし、野生型細胞とCD147をノックダウンした細胞で、ERシグナルとオートファジーの活性化状態を検討したが予想に反して有意の差はみられなかった。そこで視点を変えて細胞生存に重要なチロシンキナーゼ群の分子との関連を検討し、CD147をノックダウンした細胞ではEGFRのリン酸化が亢進していることを明らかにした。さらにこの知見を基にEGFRとCD147双方を抑制することでより効果的に腫瘍細胞の増殖を抑制できることを示した。最終年度は悪性黒色腫細胞と周囲の線維芽細胞とのCD147を介する細胞間情報伝達機構を明らかにした。腫瘍細胞は増殖と同時に浸潤・転移することで生存環境を強化する。悪性黒色腫細胞上に発現するCD147は近傍の線維芽細胞によるマトリックスメタロプロテアーゼの発現を促進することで腫瘍細胞自身の浸潤を促す。この際、腫瘍細胞と線維芽細胞は接していない。CD147の伝達機構について shed form, microvesicle, およびexosomeを介する三つの経路について検討し、CD147はshed formで線維芽細胞に作用することを示した。この成果は治療成績の改善につながるものである。
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