研究概要 |
ES細胞を用いた移植脳の研究に最も重要なのは、母系であるDDY, ELマウスの確実な系統維持である。本系統はじつに225代に達しており、純系化が極度に進んでおり系統維持が困難になっていた。このため動物育種学的手法を用い年間200匹を超える個体の増産に成功した。これによりまず免疫組織学的手法により確実に移植細胞が定着し手いることを確認することに成功した。近年この分野でねつ造疑惑の問題が出ており、実験の信頼性を得るためにはまず、確実に移植細胞が定着していることを確認したわけである。幹細胞分化のマーカー検索として、monoclonal Anti Nestin, NeuN, Microtuble Associated Protein2 (MAP2)を用いた。移植細胞にはあらかじめGreenFluorescent Protein (GFP)の遺伝子を組み込んであるものを用いた。 抑制性神経細胞とそのネットワーク検索には、GAD65,67この両者で細胞質と神経終末を蛍光免疫組織化学により、染め分けネットワークの構成を視覚化した。In vitro ではPCR法により、発現された遺伝子も定量した。タンパクについては、Western blotting の手法により各因子をNIH image with Macros によって半定量を行なった。 以上より移植神経細胞は抑制性神経細胞に分化していることが定性的に明らかにされた。in vivoでは現在残念ながら統一した結果は得られていない
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今後の研究の推進方策 |
海馬Dentate gyrusに多くの局在が予想される。感度を上げるため、断頭後脳を取り出し、-20度下でエタノール固定する。これから5micrometerの厚さでクライオトームにて切片を得る。これはパラフィン固定したものより感度が高いことを予備実験で確認しているためである。また薄い切片を用いた方がやはり高感度が得られたからである。カウントに際しても1切片の断面上に1細胞以上含まれることは無くより正確に計測ができる。新生細胞では細胞種が特定できないため、ニューロン特異的 neuN, グリア細胞に特異的 GFAP, 機能神経細胞に特異的なPSA (Poly sialic acid) をマーカ-として、FITCラベリングを用い、多重染色を行う。 上記の項目は全て、移植マウス群のみならず、発達過程を追って、まだ発作を起こしていない幼弱な5週齢から、頻繁に発作が誘発される28週齢にまでわたって、検討する。これによって、てんかん発作発現前の脳が、いかに、遺伝子発現が変化し、さらにその局在が変化してゆき、てんかん原性を獲得してゆくのか、そしてそれが幹細胞移植により変化するかを明らかにすることができる
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