乳癌の約8割を占めるエストロゲン・レセプター(ER)α陽性乳癌では、ホルモン療法に対する耐性化が臨床上問題となっており、その克服が緊急課題である。耐性化の主要機序であるERαのリン酸化には、チロシンキナーゼのLMTK3が深く関与していることが最近報告された。本研究ではLMTK3を標的とした新規ホルモン療法の開発を目指すことを目的とした。 当施設で手術を施行した219例の乳癌組織を使用して、LMTK3 mRNA発現と臨床病理学的因子および予後との相関について検討した。次に、LMTK3 mRNA発現に関与することが報告されている2カ所のイントロン領域のSNP(一塩基多型)解析を、当施設で手術を施行した471例の乳癌組織を用いて行った。結果は、全乳癌(n=219)を対象とした解析では、LMTK3 mRNA発現と予後には相関はなかったが、ERα陽性乳癌(n=154)、およびホルモン療法を施行したERα陽性乳癌(n=146)においては、LMTK3高発現症例は低発現症例に比べて有意に予後不良であった。多変量解析の結果、LMTK3 mRNA高発現は、ホルモン療法を施行したERα陽性乳癌において、独立した予後不良因子であることが示された。LMTK3の2か所のSNPの解析を行い予後との相関関係を検討したが、2つのSNP、rs9989661(T>C) T/T遺伝子型とrs8108419(G>A) G/G or A/G遺伝子型と、予後との間には相関を認めなかった。ERα陽性乳癌のみを対象として再検討したが、これらgenotypeと予後の間には相関を認めなかった
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