研究課題
我々は、ヒト膵癌切除組織より樹立した膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成することに成功した。三次元細胞外マトリックスは、フィブロネクチンやⅠ型コラーゲンを豊富に有し、通常ディッシュ上での培養と比較して、癌細胞の上皮間葉転換を促進することが判明した。また、その線維配列は、作成する際の細胞数が多いほど平行な線維の割合が増加し、平行な線維の割合が多いほど、三次元マトリックス上での癌細胞の運動は線維方向に沿って直線的に増加することが判明した。膵星細胞が低酸素下で液性因子を介して腫瘍進展促進性の挙動を示すことから、膵星細胞が作成する細胞外マトリックスの質的特徴に影響と与える因子として低酸素に注目した。低酸素下で膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成したところ、通常酸素時と比較して、有意に平行な線維の割合は増加した。低酸素下および通常酸素下で培養星細胞のマイクロアレイ解析を行い、低酸素下で発現が増大するマトリックスリモデリング遺伝子としてPLOD2(procollagen-lysine, 2-oxoglutrarate 5 dioxygenase 2)を同定した。PLOD2は間質においては正常膵組織より膵癌切除組織で発現が強く、膵星細胞のPLOD2mRNAの発現は、正常線維牙細胞や、膵癌細胞株より高く、低酸素下で増加した。RNA干渉によるPLOD2の抑制膵星細胞により作成したマトリックス線維の平衡性は低酸素下で減弱した。膵癌浸潤能増強の機序の一つとして、癌間質リモデリングによる易浸潤性の微小環境形成がある。低酸素下による癌間質リモデリング遺伝子として膵星細胞のPLOD2が同定でき、PLOD2を標的とすることで膵癌の浸潤抑制が期待される。
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