研究概要 |
本研究では,前立腺癌治療の大きな障害であるホルモン抵抗性獲得の分子機構を中心に、前立腺癌進行の機序の解明を主目的とするが、特に下記の各点において解析が終了して、英文論文として公表した。 <1> 650例の各種臨床病期での前立腺癌組織におけるERG発現と・PTEN・SPINK1・Ki-67などの異常と臨床データとの関連を検索した。特にERG陽性症例ではPTEN欠失を伴うことで予後の悪化が予測されることが示された。(Leinonenら, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev, 2013) <2>去勢抵抗性前立腺癌に対する化学療法ドセタキセル治療145例に関して特に投与量などに関してサブグループ解析した。投与量の多い患者群の方がPSA奏効率に優れるが、生存率では有意な差がない事が示された。また生存率に関する予後予測因子としては、ALP値・初回ホルモン療法でのPSA nadir値などが有意であった。(Kamiyaら, Int J Clin Oncol, 2014) <3>進行性前立腺癌のホルモン療法として、非ステロイド性アンチアンドロゲン(NSAA)が併用される。国内で使用可能なNSAAを交替で使用する事による治療<NSAA交替療法>の有用性は我々のグループが報告し、現在欧州・日本のガイドラインにおいても引用されている。交替療法を施行された161名の患者データに基づいてその有効性を予測するノモグラムを作成した。5つの独立した臨床因子(治療前PSA値・ヘモグロビン濃度・C反応性蛋白値・PSA nadir値・グリーソン分類)を用いてノモグラムを作成した。AUC値は72.5%と有効なモデルであることが示された。(Kamiyaら, Jpn J Clin Oncol, 2014) <4>近年、前立腺癌のホルモン療法患者のデータベースからJ-CAPRAスコアが開発された。重粒子線治療を受けた前立腺癌患者においてJ-CAPRAスコアを用いて解析し、その有用性をvalidationした。(Akakuraら, Jpn J Clin Oncol, inpress)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の進行に関する分子機序のひとつとして、650例の各種臨床病期での前立腺癌組織におけるERG発現と・PTEN・SPINK1・Ki-67などの異常と臨床データとの関連を検索し終えた。特にERG陽性症例ではPTEN欠失を伴うことで予後の悪化が予測されることが示された(Leinonenら, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev, 2013)。 また、臨床的に非ステロイド性アンチアンドロゲン交替療法に関するノモグラムの作成を終えた。従って、基礎的・臨床的なCRPCの進行に関する英文報告をできた事は予定よりも早く進行できた。 しかしながら、proteomicsを用いた分子の解析などは、まだ進行中であり、全体として<おおむね順調な進展>と考えている。
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