研究課題
患者の療養状況を観察する際、初学者の看護学生と熟練看護師では危険予知のための観察のポイントが異なると考えられる。そこで眼球運動測定器(アイマークレコーダ)を用いて、両者の視線運動の特性(危険個所と思われる注視点分布、注視回数)を解析することにより、熟練看護者の危険認知のための観察眼の内容を明らかにすることとした。被験者に眼球運動測定機器を装着し、危険箇所を含む患者の療養環境の3場面の静止画「患者の廊下杖歩行」「ポータブルトイレ設置したベッド周辺環境」「車いす移乗介助」を10秒間呈示し、危険個所の視線を向け、危険と判断した箇所を発見した際は、ボタンを押すように指示した。危険認知回数は、3場面とも、看護学生より熟練看護師の方が有意に多かった。実験直後に危険と判断した理由を問う質問紙調査では、熟練看護師は患者の身体的な部分に着目し、起こりうる危険を予測していた。次に、上記方法で明らかにした熟練看護者の観察眼の内容を、看護学生の医療安全教育に導入した。熟練看護師の上記3場面における危険箇所の観察ポイント、危険と判断した理由について説明した。さらに、看護学生にスタントマンが演じる身体障害のある患者の車いす移乗介助を体験してもらった。演習前後に看護学生を対象に上記3場面の危険認知箇所を発見する調査と演習内容の理解度「医療事故の要因」「観察ポイント」「予防策」「医療事故のイメージ」についての質問紙調査(6件法)を行った。3場面とも演習前より演習後の方が危険認知回数・演習内容の理解度ともに有意に増加していた。以上のことから、この演習は、看護学生の医療事故に対する危険認知力を向上させる効果があったと考える。
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看護人間工学研究誌
巻: 15 ページ: 31-36
PC17390384