本研究課題の目的は、認知機能障害の評価尺度であるFunctional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function Version 3 (FACT-Cog)の日本語版を開発すること、および化学療法を受けている、もしくは受けたがん患者に対する無作為化比較試験を実施し、教育と速度フィードバック療法を組み合わせた介入の認知機能障害に対する有効性を検証することである。 平成28年度は、昨年度に引き続き、認知機能障害に対する介入の有効性を検証する研究を行った。平成27年度内にリクルートした対象者が2人であったことから、対象者を得るためのリクルート方法の工夫が必要と考えられた。そこで、協力施設を1施設、協力を得る乳がん患者の自助グループを各1つ追加し、より広くリクルートを行った。さらに、新聞広告に研究の協力依頼を掲載し、地域住民に向け研究参加を呼びかけた。しかしながら、結果的に得られた対象者は9人であったことから、有効性を検証するための解析を行うことができなかった。なお、対象者の主観的な評価として、介入群の3人全員が速度フィードバック療法に対し肯定的に評価した。さらに、教育を行った6人についても、全員より理解度、有用性ともに肯定的な評価を得た。自覚されていた認知機能障害については、対照群の2人はあまり改善がみられなかったが、介入群、教育群の対象者6人においては改善がみられなかった者はいなかった。対象者が少ないため、術後月数、化学療法やホルモン療法の治療期間、運動習慣等、認知機能障害に関連すると思われる因子のばらつきが大きかった。今後も有効性をある程度確認することができる人数を得るまで本研究を継続することが必要と思われた。
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