研究課題/領域番号 |
25463605
|
研究機関 | 日本赤十字九州国際看護大学 |
研究代表者 |
小林 裕美 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (50369089)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 予期悲嘆 / 訪問看護師 / 家族 / 在宅での看取り / 介入モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、在宅での看取りを推進するためには、訪問看護における家族への支援が重要であると考え、そのなかでグリーフケアの一部である予期悲嘆への支援に焦点を当て、在宅で看取りを行う家族への介入プログラムを開発することを目的としている。27年度は前年度からの継続でデータ収集と分析を実施した。データ収集はほぼ終了しているが、分析結果を見ながら追加データの必要性を検討している。分析は、質的統合法(KJ法)を用い事例毎にまとめて順次公表している。その結果の一部は以下のとおりである。 末期がんのA事例の妻に対するB看護師の援助は、家族の予期悲嘆が強いケースとして、亡くなっていく人に対するアンビバレンスな感情に揺れ動く場合があり、その思いを理解し、一方の感情を尊重しつつ心底の感情を看取る場面で引き出していた。訪問看護として本人のケアをスタッフに任せ、管理者が個別に家族と関わることは重要なひとつの方策と考えられる。そのためにも予期悲嘆の強さの背後にある感情を見極める援助が重要であることが示唆された。また、C事例の経験を元にしたD看護師の考えによれば、予期悲嘆尺度活用の条件は、家族の心身の状態、信頼関係、看護師間のサポート体制であり、効果として、早期に使用して時間を有効に家族と接触できること、表現しづらい気持ちの代弁と聞けない質問の答えが得られることが示された。予期悲嘆への援助として、家族が表現できない気持ちを理解して寄り添うことが必要であり、本尺度をツールとして直接は聞けない内容の回答を得ることでその意味を捉え、家族と深く関われることが示された。 これらより、研究者が開発したこの尺度は、看取りを行う家族に簡便な方法で予期悲嘆の程度と傾向を測定できるが、新たにわかったことは、介入モデルを作成するには看護師側の要素を加味する重要性である。今後は結果を元に介入モデルを作成し検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の方法として、事例研究を積み重ねながら、介入モデルを作成する計画で進めている。現在、データ収集は、ほぼ終わったが、分析に時間を要している。分析方法は質的統合法を採用しており、時間がかかっているところである。しかし、研究者は、この分析方法のスキルアップの研修にも参加し、より良い結果を導きたいと考えており着実に進めるつもりである。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、事例研究の個別分析を実施している。これが終了したところで、総合分析を行う予定で、質的統合法による分析を丁寧に行うことが重要であると考えている。 総合分析の結果を生かしてモデルを作成する予定である。当初の計画では具体的な介入プログラムの作成であったが、結果から、在宅で看取りをする家族への介入プログラムでありながら、看護師の要素を加味することが重要であることがわかった。そのため、介入プログラムは作成せず、介入モデルを示す計画に変更した。しかし、モデル作成と調査による検証方法については見通しがついているため順次行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ収集および分析が遅れ気味になったため、そのための経費が予定より少なかったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
追加のデータ収集に関する交通費等の経費および、データ分析にかかる人件費等に使用する予定である。
|