研究課題/領域番号 |
25511005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松永 典子 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80331114)
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研究分担者 |
徳永 光展 福岡工業大学, 社会環境学部, 教授 (20341654)
施 光恒 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (70372753)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 日本研究 / 留学生教育 / 知の技法 / 人材養成 / アカデミックスキル / 教育プログラム / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本研究課題では人文社会科学分野の学際的比較文化研究の観点から、日本型「知の技法」を定式化し、また、その意義や長所を明らかにした研究成果を、留学生を惹きつけることのできる分野横断的な教育プログラムの創出に生かすことを研究の目的としている。このため、本研究では理論研究(A「知の加工学」班)と教育実践研究(B「留学生教育」班)との両輪を動かし、研究課題の解明を進めている。A「知の加工学」班では、日本型「知の技法」がどのように論じられてきたか、日本型「知の技法」の特徴などの理論化を進めている。B「留学生教育」班では、そうした「知の技法」研究の成果を大学教育・大学院教育に還元する教育実践研究を行い、学部高年次生、大学院生を対象に総合型日本語人材養成プログラム開発を進めている。 平成28年度の研究成果としては、人文社会科学分野の専門と日本語教育の連携を進め、文化人類学や政治学の視点や知見を取り入れた教材、及び学習者が主体的に活動できる演習部分を組み込んだカリキュラムを開発したことが挙げられる。さらに、研究の成果を教育に還元してきた。開発した教材を用いたタスク型活動(調査、課題の分析・考察、発表)をメインとした教育実践の分析からは、知識の獲得や視野の広がりという点では高い効果が見られた。ただし、アカデミックスキルのうち、「読む」・「書く」技能の習得に関しては他の技能に比し学生自身の自己評価が極端に低い結果となっている。このため、今後さらに、フィードバックの方法に関する検討や技能の習熟度、態度、志向性の変化を測っていくなどの対応が必要ではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究のほうはおおむね順調に進んできたが、理論研究をもとにした教材開発は、書き下ろしにより本文を執筆するなどの作業が含まれており、教材の原案完成に至るまでに予想よりも時間を要してしまった。また、教材は実践してみて、その効果を測りながら改良していく必要があることから、その効果の検証のためには単年度の実践では効果の検証を十分に行うことが困難である。したがって、教材完成のためには、さらに実践を重ねたうえでの検証が必要なことから、この点において当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、フィードバックの方法に関する検討や技能の習熟度、態度、志向性の変化を測っていくなどの課題の解決のために、近年、コミュニケーション教育のみならず「主体性・多様性・協働性」を育む方法として入試等でも活用されている演劇作り(課題を解決するための提案を協働で行う総合的活動)とルーブリック評価(学習者自身が到達目標を明示的に把握し、自身の技能の習熟度を具体的項目により測るしくみ)を組み込み、実践を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の成果のひとつとして教材を新たに開発したが、その成果の検証のためにはさらに実践を重ね、その効果の検証をはかることが必要である。このため、単年度の実践では効果の検証を測り、教材に改良を加えてより良い教材にしていくには時間的に不十分であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
さらに教材およびカリキュラムに改良を加え、改善したカリキュラムと教材を使用した実践を重ね、評価にもルーブリック評価を取り入れることにより、学習者の技能のみならず態度・志向性の変化についても評価を加えることが可能になると考える。以上の大きく2点の改善により、開発した教材の有効性を検証していく予定である。
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