本研究は、マイノリティの権利獲得を求める「アイデンティティの政治」が社会運動研究やジェンダー・セクシュアリティ研究において否定的に評価されてきた経緯を踏まえ、限界を見定めた上で、その可能性や現代的意義を明らかにすることを目的とした。規範理論、在日朝鮮人研究、クィア研究から検証した際、マイノリティ集団が個別に置かれた差異と同時に、差別や排除を生み出す社会構造、マジョリティの規範形成を読み取る必要が確認された。また、様々なマイノリティ集団の社会的な困難が増殖する時代に、シングル・イシューとしてのみならず、差別の共通点をみいだすことによる横断的な反差別理論の検討も喫緊の課題であることが確認された。
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