研究課題/領域番号 |
25512012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
阪東 美智子 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (40344064)
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研究分担者 |
中村 美安子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (30363857)
佐藤 由美 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (70445047)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 都市計画・建築計画 / 自然災害 / 仮設住宅 / 高齢者 / 障がい者 / 生活支援 |
研究概要 |
本研究は、今後の大規模災害への対応力を高める観点から、高齢者・障がい者等に配慮した民間賃貸仮設住宅の適切な供与の方法を構築することを目的としている。平成25年度は、①「高齢者・障がい者等に対する既存制度の運用に関する調査」と、②「民間賃貸仮設住宅における生活支援に関する調査」について、プレ調査を実施し仮説の確立と調査票デザインの検討を行った。 ①については、平成23年度に終了したあんしん賃貸支援事業のその後の状況、平成22年度で終了したストック活用型住宅セーフティネット整備推進事業の運用実績、平成24年度に開始した民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業の運用実績などについて、国土交通省に対するインタビュー調査を実施した。次に、上記の制度運用が活発に行われていると思われる北海道と大阪府に対してインタビュー調査を実施した。これらの結果から、既存制度は空き家の有効活用による住宅確保要配慮者への貸与や災害時の提供を条件としてはいるが、国直轄の事業であり基礎自治体の関わりが薄く、現状では災害時の提供に備えたストックとしての運用には課題が多いことが明らかになりつつある。 ②については、全国社会福祉協議会と全国民生委員児童委員連合会事務局を対象に、東日本大震災における社会福祉協議会や民生委員の動きについてインタビュー調査を実施した。次に、福島県社会福祉協議会、郡山市社会福祉協議会、富岡町社会福祉協議会、双葉町社会福祉協議会、仙台市社会福祉協議会、宮城県社会福祉協議会、仙台市の各担当者から、東日本大震災における民間賃貸仮設住宅居住者へのサービスの提供状況と課題に関してインタビュー調査を行った。建設型仮設住宅に比べて民間賃貸仮設住宅への生活支援の開始は2年以上遅れたが、民間賃貸仮設住宅における障がい者等の補足割合は低く、これまでのところ特有の課題は特に顕在化していないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度は、全国調査を始める前に仮説の確立と調査票のデザインの検討を行うために、プレ調査として複数の自治体や関係団体にインタビュー調査を実施することから研究活動を開始した。プレ調査自体は順調に進んだが、その結果として、申請段階で立てていた仮説に大幅な変更を加えなければならないことが判明した。 具体的には、「高齢者・障がい者等に対する既存制度の運用に関する調査」について、全国の都道府県を対象に調査を実施する予定であったが、「住宅セーフティネット整備推進事業」は国の直轄事業で都道府県の関与がほとんどないため、都道府県は当該事業の実態についての十分な情報を把握しておらず、この事業による住宅ストックを災害時に活用する体制がほとんど整備されていないことが明らかとなった。このため、調査デザインを根本的に見直し変更する必要が生じた。 「民間賃貸仮設住宅における生活支援に関する調査」についても、社会福祉協議会では障がい者等の把握がほとんど行われておらず、障がい者を対象とした生活支援の想定はほとんどなされていないことが明らかとなった。このため、調査対象をサービス提供事業者や当事者団体等に拡大することも検討することとした。 このように、当初想定していた高齢者や障がい者等に配慮した民間賃貸仮設住宅の供与の方策のフローを見直し、新しい仮説の下で研究計画を見直すことに時間を費やしたため、達成度が計画より遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、「高齢者・障がい者等に対する既存制度の運用に関する調査」の実施をやめ、運用については既存統計の収集により状況を把握することにする。代わりに、当初から計画していたもう一つの調査である「東日本大震災の被災者に対する民間賃貸仮設住宅の供与実態と今後の災害に備えた民間賃貸仮設住宅の供与のあり方に関する調査」に集約し、その中で居住支援協議会等の役割に関する調査項目等も追加する。とくに、今後の災害に備えて自治体独自でどのように民間賃貸住宅のストックを整備しているのか重点的に調査を行う。また、不動産関係の業界団体を対象に、「高齢者・障がい者等に配慮した物件情報の提供方法に関する調査」を実施する。岡山県の不動産団体など高齢者・障がい者に特化した不動産紹介を行っている団体等を対象にインタビュー調査を実施して、現状把握と課題の整理を行う。「民間賃貸仮設住宅における生活支援に関する調査」については、対象をサービス提供事業者や当事者団体等に拡大して引き続き調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた2つの全国調査(「東日本大震災の被災者に対する民間賃貸仮設住宅の供与実態と今後の災害に備えた民間賃貸仮設住宅の供与のあり方に関する調査」「高齢者・障がい者等に対する既存制度の運用に関する調査」)を実施しなかったため、その調査費用が繰り越しとなった。 次年度は、「東日本大震災の被災者に対する民間賃貸仮設住宅の供与実態と今後の災害に備えた民間賃貸仮設住宅の供与のあり方に関する調査」「高齢者・障がい者等に配慮した物件情報の提供方法に関する調査」「民間賃貸仮設住宅における生活支援に関する調査」の3つを実施する。 一つ目は質問紙調査であり、郵送費やデータ入力作業謝金費の支出を予定している。二つ目と三つ目はインタビュー調査を主体とし、現地への旅費や記録作業謝金費等の支出を予定している。
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