研究課題
2011年3月に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の爆発により、福島県に生息するニホンザル(以下,サル)が放射性物質に被ばくした。そこで, 福島市のサルを対象として、被ばくによる健康影響を明らかにすることを目的として、筋肉中放射性セシウム測定、繁殖状態検査、病理学的検査、血液学的検査を行った。2014年度は124頭を回収し、解剖した。妊娠率は、Hayama et al(2012)の方法にしたがって推定した。筋肉中放射性セシウム濃度の測定は、解剖時に筋肉を100g~1kg程度採取し、公定法に従って蓄積量を測定した。また、殺処分直後に心臓採血によって血液を採取し、実験室内で血球数などを検査した。臓器はホルマリンで固定し、パラフィン標本を作製した。筋肉中放射性セシウム濃度は、2013年の春以降から500Bq/kg 前後を推移し、漸減傾向にあるが、越冬期に濃度が上昇する現象以外に個体により高い値を示すものが観測された。これらは大気降下物中に高濃度の放射性セシウムを観測された時期にほぼ一致したことから、現在でも原発からの放射性物質の放出が続いていると推察された。また、妊娠率は2013-14年妊娠期と2014-15年妊娠期を合算し、37.5%(6/16)と推定された。妊娠率の観測は2008-09年妊娠期から継続しており、これまでは50%前後で推移してきたが、これに比べてやや低い結果となった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、捕獲個体の採取や分析が進められた。組織標本の作製も計画通り実施できたが、研究室の移転等のため、十分な観察が行えなかった。
血球数の減少が確認されたことを論文にまとめ、国際誌や国際学会で発表したところ、大きな反響があったため、次年度は造血機能に関わる病理標本を中心に精査する。
調査旅費の支出が少なかったため
次年度は現地調査を複数回予定しているため、問題はない
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 5793
10.3354/esr00553