研究課題/領域番号 |
25540152
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
中谷 英明 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20140395)
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研究分担者 |
芝野 耕司 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (50216024)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 韻律 / サンスクリット・データベース / 口頭伝承 / アーカイブ検索 / Ngram分析 / インド古典 / パーリ聖典 / サンスクリット韻律 |
研究実績の概要 |
現在の情報検索システムでは、単純ラテン大小52 文字を中心とした文字コードのみに依存する検索が行われているが、本研究は、口承による文献伝承を行ってきたインド古典において重要特質となっている「韻律」に基づく新しいタイプのインド古典文献アーカイブを構築すること、またそれによって情報検索に文字表現とは異なる特徴量である韻律を取り入れる重要性を実証することを目的としている。 本年は主要インド古典のテキスト・データベース2629ファイル(604MB)の分析を開始し、先ず総合Ngram分析による定型句抽出及び文献ごとの特徴的定形表現についてカイ二乗検定により分析を行った。 また中谷、芝野の両名はJawaharlal Nehru Univ., Univ. of Pune, Symbiosis International Univ., Jamia Millia Islamia, Tilak Maharashtra Univ.を訪れ、インド古典文献データベース作成に携わる研究者と情報交換を行った。 さらに中谷は京都大学白眉センター、コレージュ・ド・フランス、フランス極東学院が共催した国際会議「仏教と普遍主義」(2014年10月3日~5日)において韻律分析を用いたパーリ仏典の層分けに関して招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回のインド調査により、欧米、インドにおけるインド古典データベースに基づく近年の韻律研究は、韻律・音韻・正書法の関係を論ずる文献学的研究を除くならば、(1)韻律形式とその名称を自動的に特定する研究:例:Sanskrit Metre Recognizer (Heidelberg大学)、(2)Generative metrics理論をサンスクリットに応用する研究:Ashwini S. Deo 等が主流であり、韻律検索を付したアーカイブ構築は全く行われていないことが判明した。Rig-veda(前1200年頃) 以来の韻律発展史を綿密に跡付けるならば、インド韻律の基本単位が3音節であったことが解かり、「3音節単位」として捉えることによって初めて韻律発展を韻律の内的、自律的展開として理解できる。こうして韻律史が解明されるならば、韻律と文献内容あるいは文学的分野の対応関係も明確になり、さらには韻律をインデックスとするアーカイブ検索の有効性が保証されることになるであろう。こうした我々の企図の重要性は本年度の研究によって明確に確認されることになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.「3音節単位」分析によって、(1)リグ・ヴェーダ、マハーバーラタ、(2)パーリ仏典、(3)ジャイナ教聖典等、古典諸文献の年代的層分けを行い、韻律諸形式と内容の対応関係を明確化する。 2.本年度までの成果をもとに、検索システムとして必要な機能を拡張し、システム仕様を確定する。 3.韻律情報による検索システムを制作する。 4.検索システムを実際に用いて、年代不詳のものが多く、また一文献が数世紀にわたる制作の末の複合物であることが多いインド古典文献の年代的、内容的再整理を試みる(ただしこれはリグ・ヴェーダ、マハーバーラタ、パーリ仏典の一部に留まるであろう)。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用中のノートパソコンが故障せずに稼働したため、買い替えの必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上位機種のパソコンを購入し、処理機能を向上させる。また謝金を利用して新規にウェブ上に現れたインド古典データベースのダウンロードと整備を行う。
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