日常使用される多くの化学物質に関して、胎児・幼児の脳神経系の発生・発達に及ぼす有害影響の知見は十分ではない。我々は、プラスチック製品等の原材料の一つビスフェノール A (BPA)の胎生期曝露によるマウス脳神経系異常を世界に先駆けて報告した。ところで塩基配列に拠らない遺伝情報(エピゲノム情報)は多くの遺伝子群の発現量を制御する。胎生期 BPA 曝露 は、胎仔脳のエピゲノム情報と発現量の制御を撹乱した。本研究では、離乳期以降では発現量の変動が終息する一方、1つの遺伝子から複数種類の似た蛋白質を産生する仕組み(選択的スプライシング)が乱されていることを見いだし、エピゲノム情報撹乱の関与が推察された。
|