本研究の目的は,電気・電子工学の基礎(主に電磁気学,電気回路などの基礎科目)の学習者を対象として,拡張現実技術などを活用して,素子の動作や,現象の特徴などを視覚的に解り易く理解するための教材を開発することである. 最終年度である平成27年度は,拡張現実技術で表示する教材を,できるだけ簡易な方法を用いて作成することとし,主に2次元の画像を表示する幾つかの教材を試作した.これは精密な3次元のコンピュータグラフィックを用いた表示よりも,2次元の画像を用いた表示の方が,教材の作成に要するプロセスが少なくて済む点,通常の授業などで作成した資料が再利用できる点,などを考慮したことによる. 具体的には,電磁波の伝搬について学習する拡張現実表示教材について,電磁波の数値計算方法のひとつである時間領域差分法(FDTD法)を用いて計算した結果を複数の2次元画像を用いて簡易な方法で表示する形で作成した.これに加えて,コンデンサーの学習を行う教材などを作成して,学習用コンテンツの充実を行った. 本年度は拡張現実表示教材に加えて,拡張現実による表示を活用した学習環境の提案や試行なども行った.具体的には,ARマーカーの検出に対応してWeb画面で情報を表示するという簡易な方法を用いて,学習用データや実験・実習の資料などの表示を行うシステムを試作した. さらに,小学校,中学校,高等学校の学習指導要領の中から,拡張現実表示に適した学習内容について精査し,一覧表にまとめた.今後は,この結果に基づき簡易な拡張現実教材を作成していく予定である.
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