研究課題/領域番号 |
25560303
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高見 和至 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50236353)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | いじめ / 中学生 / 部活動 |
研究実績の概要 |
中学生を対象としたアンケート調査結果の概要は以下である. 調査対象は,中部地方の都市部近郊に位置する公立中学校31校の中学生10.202名(欠損値のある回答を除いた分析対象数10.175件)であった.データの構成は,性別が「男子5186名,女子4989名」で,学年の構成は「学年:1年生3442名,2年生3316名,3年生3417名」で,3つの学年の男女比は近似している.平均年齢13.71歳(標準偏差0.976,最少12歳,最大15歳)であった. 調査結果の全体的な概要を述べる.本研究では,いじめを具体的な行動内容で提示して,第2学期に相当する約3か月間に体験した頻度「ぜんぜんない~今までに2-3回ぐらい~1か月に2-3回ぐらい~1週間に一度ぐらい~1週間に何度も」の5段階から選択させる方法で回答させた.いじめの内容は文部科学省のいじめの態様に準じて「仲間はずれ」「からかい・悪口」「軽い暴力」「ひどい暴力」「窃盗・破壊」「ネット・携帯悪用」の6つを設定した.また体験の種類は,いじめを「された」「した」「見て見ぬふり」「制止した」「声かけやなぐさめ等の被害者援助」の5つについて回答を求めた. ここでは,「された」経験の「ぜんぜんない」という回答の割合を報告する.つまり,いじめに関わりのない生徒の割合のから,いじめの発生状況が推察できる.「ぜんぜんない」回答割合は,「仲間はずれ:64.8%」「からかい・悪口59.5%」「軽い暴力80.5%」「ひどい暴力90.3%「窃盗・破壊92.3%」「ネット・携帯悪用92.8%」であった.つまり,3割から4割の生徒が,仲間はずれや悪口を,数回は経験していることになる.さらに,暴力をみると「軽い暴力」を月に2-3回以上受けた生徒は約8%,「ひどい暴力」では4.3%いることが分かった.今後,学年や運動部員の差異,発生した相手や場所などの分析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、中学校の部活動におけるいじめの現状を、成人を対象とした回顧調査から検討し、現在の中学生が直面する状況を検討する予定であった.研究手法としてはインターネットを利用したWeb調査を実施する予定であった.しかしながら,複数の中学校から調査協力を得られることになり,紙面による質問紙調査が実施できた.調査対象者数は,中学生男女1~3年生まで約7000名であったが,のちにさらに協力を得られて最終的には合計12.000名から回答を得られた. 現在までに統計解析のための電算ファイルへのデータ入力を終了して,最初の全体的傾向を掌握するための分析を行った.今後引き続き,詳細な分析を行う必要がある. 当初のWeb調査からのアプローチとは異なったため,達成度を一概に評価できないが,研究目的の「中学生におけるいじめの発生と運動部活動の関連」を検討するためには,稀有な調査機会が得られ,実際に大量のデータ収集が行えたことは評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間の最終年次にあたる本年は,研究結果の公表に集中して取り組む.大量の現中学生のアンケート調査が可能になったため,当初の調査ならびに公表予定とは異なっているが,今回の約12000名のデータは大変貴重なものである.詳細な分析を施して,その結果を学会発表ならびに学会誌へ投稿する. ・学会発表予定:日本体育学会第66回大会(2015年8月25-27日,国士舘大学)および日本心理学会第79回大会(2015年9月22-24日,名古屋国際会議場) ・学会誌投稿予定:教育心理学研究(日本教育心理学会),体育の科学(杏林書院)
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