研究課題/領域番号 |
25560331
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
尾方 寿好 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (80415364)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺活量 / 酸素供給量 / 痙縮 / 他動歩行 / 立位 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、脊髄には筋活動を持続させるために必要なエネルギーを生み出すための固有の機能が存在するか否かを解明することである。平成25年度は、エネルギー代謝に必要な酸素供給能力に着目した。本研究では、脊髄固有の機能を解明するために、頸髄の一部が損傷し、この損傷部以下の脊髄と脳の神経連絡が分離した頸髄損傷者を対象とした。この頸髄損傷者の麻痺した脚を外力によって他動的に動かして歩かせた。この他動歩行により与えられる末梢感覚入力により、麻痺下肢に歩行様の筋活動が発現することが知られている。この他動歩行中の酸素供給系の反応を検討した。 対象者は10名の頸髄損傷者 (38±7歳) であった。これらの被験者は全て、受傷後10年以上が経過しており、ASIA機能障害尺度がAの、完全麻痺を有する者であった。他動歩行中の肺活量と、上肢の酸素供給量を測定した。肺活量を測定した理由は、他動歩行中に酸素の取り込み量を増大させるための呼吸系の反応が生じると想定したためである。また、上肢の酸素供給量を測定した理由は、脚の筋群への酸素供給量を増やすために、上肢筋群をはじめとする非活動部位の酸素供給量が減少すると想定したためである。本研究では、他動歩行を実施できた者は3名であった。この3名のケースでは予測した変化は観察されなかった。残り7名の被験者では、過度な起立性低血圧や筋痙縮により、立位姿勢での他動歩行の実施が困難と判断されたため中止した。 本研究の目的を達成するための被験者の条件として、頸髄損傷を有しており、かつ完全麻痺を有することであった。このような障害を有する被験者で当初の目的を達成するために、立位姿勢でなくても他動歩行が実現できる器具の開発に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究概要で述べたように、他動歩行を実施できたケースが限られていたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究で明らかになった課題は、受傷後の経過年数が長い頸髄完全損傷者では、立位姿勢にて他動歩行が実施困難であることである。そこで、完全な立位姿勢をとらなくても他動歩行を実現できる器具を開発し、平成25年度に行ったものと同様の実験を追加で実施していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、約10名の頸髄損傷者を対象に実験を行う予定であったが、立位姿勢をとることに伴い生じる危険性が理由で、この実験を実施できた被験者が少なく、研究の結論を得ることができなかった。このため、学科発表や論文発表を行うことができず、旅費やその他経費の未使用経費が生じた。平成26年度では、これらの経費と平成26年度分経費を合わせて、立位姿勢を取らなくても他動歩行を実現できる器具の開発を行う。 次年度使用額と平成26年度交付額を合計した経費を用いるが、この経費は、非立位式の他動歩行器具の開発(8月下旬まで)と、7月以降の実験における謝金、並びに学会発表費に充てる予定である。
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