研究課題
挑戦的萌芽研究
日本語では語彙の多くが漢字で表されており,漢字を学ばなくては語彙を学習できない。母語話者のメンタルレキシコン(脳内辞書) には,漢字や部首を介した語彙概念の意味的ネットワークが展開していると考えられる。一方,日本語学習者は,漢字や部首の意味的ネットワークをどのように形成するのだろうかを明らかにするために,本課題では,漢字間の意味的距離を二次元上に描く独自のプログラムを開発し,言語的特徴の異なる母語を持つ日本語学習者を対象として,ウェブ上で実験を行い,漢字の認知的意味空間のあり方を縦断的に検討することにした。初年度の25年度には,玉岡(2005) で用いた実験プログラムを基に,偏を中心とした複数の漢字間の意味的距離を二次元上に描くプログラム「ViCS-Kanji (Visualizer of Cognitive Space for Kanji」を完成させ,基準データとなる日本語母語話者を対象とした実験を終えた。さらに,中国の大学で日本語を専攻する中国人日本語学習者を対象とした実験も行った。得られたデータについて,さんずい,いとへん,にんべんの部首を持つ漢字の距離データとして整理,分析しているところである。これを,多次元尺度法によって,各漢字間の距離に基づいた空間を日本語母語話者と中国人学習者とで描く。あわせて,個々の漢字間の距離の日中間の差を見ることによって,両者の漢字形態素に関する認識の違いを考察する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画では,初年度の25年度には,プログラムを完成させ,日本語母語話者の基準データを取得する予定であった。しかし実際には,中国人日本語学習者の実験を行うことができた。
2年目である26年度には,同様の方法で,韓国語,ベトナム語,モンゴル語を母語とする日本語学習者を対象とした実験を実施・分析し,母語による漢字認知様式の類似点と相違点を検討していく予定である。
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