研究課題/領域番号 |
25580112
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (70227263)
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研究分担者 |
木山 幸子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 長寿医療工学研究部, 研究員 (10612509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新常用漢字 / 漢字データベース / 漢字二字熟語 / 漢字の意味空間 / 中国人日本語学習者 / 韓国人日本語学習者 |
研究実績の概要 |
日本語では,漢字2字で構成される熟語が数多くあり,国語辞典の見出し語のうち約70%を占めている(Yokosawa & Umeda, 1988)。そこで,以下の3つのことをこれまでに行った。まず第1に,2010年に新しい常用漢字表が発表され,1981年に制定された1,945字から2,136字に改訂された。そこで新しい常用漢字に合わせて,2000年から2010年までの毎日新聞のコーパスを使用して,使用頻度,エントロピー,音主率(全体の音読みの頻度),視覚的複雑性,部首頻度など多様な漢字特性からなるデータベースを作成した。さらに,漢字二字熟語の使用頻度一覧も作成した。そして,Webサイト上で,検索エンジンを作り,多様な検索ができるようにした。http://www.kanjidatabase.com/を参照のこと。第2に,現代の韓国語では,漢字をほとんど使用していないものの,漢字表記由来の語が多く存在している。また,中国語では漢字が母語として使用されている。そのため,韓国語または中国語を母語とする日本語学習者は日本語の漢字語の習得において有利であると言われている。しかし,漢字表記を基本とする語彙であっても,品詞や文法的な用法が異なる場合がある。そこで,韓国語または中国語を母語とする日本語学習者のために,日本語,韓国語および中国語の3言語で,書字が類似した二字漢字語(日韓中同形二字漢字語)の品詞情報を記録したデータベースを作成した。これらは,『ことばの科学』(名古屋大学大学院国際言語文化研究科出版)の第27号の特集号として,公表した。第3に,漢字の意味空間を描くための実験をWeb上でできるようにプログラムを作成した。日本語母語話者および中国語母語話者による漢字認知で,実験データの高い信頼性を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい常用漢字の特性のデータベースと検索エンジンつきのWebサイトを作成したことで,各種の漢字の特性が容易に検索でき,日本語学習者の漢字熟語の選択にも役立つ基本データソースを完成した。さらに,この漢字データベースには,日本語の漢字二字熟語一覧から,漢字を選ぶと漢字二字熟語が自動的に選べるようにできている。これが完成したことが,漢字研究の基本として重要である。さらに,国際交流基金・日本国際教育支援協会 (2007)の『日本語能力試験出題基準』(2007,改訂版)の<文字・語彙>の4級,3級,2級の語彙から漢字2字で構成される語彙を全て抽出すると,総計は2,060語になった。この中で,日本語と韓国語の同形二字漢字語は,1,872語あった。これらの語彙について,『標準国語大辞典』を基準として,韓国語の情報を記載した。具体的な情報は,韓国語の漢字表記,ハングル表記,動詞の態(能動態か受動態か),形容詞の使用と「的」の付加非付加を記入した。一方,日本語と中国語における同形二字漢字語は1,510語であった。これらの語彙について,日中の品詞情報が一致するかどうかを明記した。さらに,漢字の意味空間実験ソフトをWeb上で実施できるようにプログラムを準備した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,新しい常用漢字のデータベースと検索エンジンが多くの研究者や教育者に使用してもらえるように,国際ジャーナルに紹介する記事を執筆する。さらに,日本語学習者のための漢字二字熟語のデータベースに,意味情報と音韻情報を追加して,Web上で検索できるようにする。さらに,漢字の意味空間の実験を世界中で実施できるように,Web上でソフトが動くようにして,さらにフィードバックができるようにする。以上のように,(1)常用漢字データベース,(2)中国語・韓国語母語話者のための漢字熟語データベース,(3)漢字の意味空間実験プログラム,の3種類の内容をインターネット上で一般公開する。
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