研究課題
本研究の目的は,英文読解テストにおけるタスクとエクササイズの違いを明らかにし,タスク型英文読解テストを作成するための基準を提案することにある。前年度はタスク分析に基づき,様々な目的で書かれた英文を読んで内容を他者に伝達するというタスク型英文読解テストを6種類作成し,改良を重ねてきた。研究計画の2年目にあたる平成26年度は,タスク型英文読解テストの作成基準を示す第一歩として,構成概念妥当性の推論に必要な統計解析を妥当なものとするため,採点者による評価の信頼性に焦点を当てた。具体的には,評価の信頼性を揺るがすタスクの特徴,評価者の特徴,評価尺度の特徴を明らかにし,タスク型英文読解テストで得られた受験者のパフォーマンスを適切に評価するための尺度を提案することを目的とした。6種類のタスク型英文読解テストを日本人大学生122名に実施した。個々のタスクの達成目標を詳細に記述した「タスク依存尺度」と様々なタスクに共通する特徴を一般化して示した「タスク独立尺度」という2種類の評価尺度に従って,6名の採点者が受験者のパフォーマンスを評価した。測定誤差を一般化可能性理論により推定した結果,(a) 両尺度ともある程度平行性をもって採点に使用できること,(b) 評価者間信頼性はタスクに含まれる詳細情報,情報の再構成,社会言語学的な要因に対する採点者の考えにより変化することが分かった。その上で,より望ましい評価の在り方(評価尺度の種類・タスク数・評価者数)について具体的な示唆を得た。今後の研究では,採点者に対し評価方法のトレーニングを行った後で再度採点をし直した場合,あるいはすべての評価者が両尺度での採点を行った場合の信頼性を検証する必要がある。また,本研究で用いたタスク型英文読解テストの結果から受験者の英文読解力がどの程度であるかを推論・評価するためにテストの構成概念妥当性を検討する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りの進捗が見られ、口頭発表や査読論文において研究成果を発表した。
今後 は3年目の研究計画および発展的課題に着手する。得られた成果については学会や論文投稿という形で発表し、外部機関による客観的な評価を確認しながら研究を進めていく。
研究成果発表のひとつが2015年度となったため。
国内学会発表に関わる旅費に執行する予定。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
JACET Journal
巻: 59 ページ: 131-150
ARELE: annual review of English language education in Japan
巻: 26 ページ: 29-44
巻: 25 ページ: 1-16
http://www.u.tsukuba.ac.jp/~ushiro.yuji.gn/