研究課題
本研究の目的は英文読解テストにおけるタスクとエクササイズの違いを明らかにし,タスク型英文読解テストを作成するための基準を提案することにある。前年度はタスク型英文読解テストの作成基準を示す第一歩として,構成概念妥当性の推論に必要な統計解析を妥当なものとするため,一般化可能性理論による評価の信頼性について検証した。具体的には評価の信頼性を揺るがすタスクの特徴,評価者の特徴,採点基準の特徴を明らかにし,タスク型英文読解テストで得られた受験者のパフォーマンスを適切に評価するための評価尺度を作成した。最終年度の平成27年度はタスク型英文読解テストの構成概念妥当性の一部を検討するため,テスト得点が英文読解力を構成する技能・知識とどのように関わるのかを構造方程式モデリングにより検証した。6種類のタスクから得られたテスト得点を観測変数とした場合,「読解を通したタスク遂行能力」という潜在変数は,TOEIC Bridgeの読解問題および語彙サイズテストから構成される「英文読解力」と中程度の相関 (.66) にあることが分かった。多相ラッシュモデリングによりテスト項目の難易度を推定したところ,(a) 難易度が適度に分散し英文の難しさと一貫していること,(b) 各項目の難易度がモデルから逸脱しないこと,(c) タスクは一貫して同じ能力を測定していることが示唆された。また,評価者による採点のばらつきを調整し,ラッシュモデリングで協力者のタスク遂行能力の推定値を算出したところ,外部基準テストとの相関は非常に強いことが分かった。以上より,タスクの詳細と採点基準を確立し,評価の信頼性を確保すれば,本研究で実施したタスク型英文読解テストは日本人英語学習者の「読解を通したタスク遂行能力」を十分に測定できることが示唆される。今後はタスク型英文読解テストの実用性を含めた総合的な妥当性の検討が求められる。
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JLTA Journal
巻: 18 ページ: 92-114
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