研究課題/領域番号 |
25580148
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
佐賀 朝 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40319778)
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研究分担者 |
川野 英二 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20335334)
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 都市下層 / 比較史 / 移民 / 都市社会史 / 都市社会学 |
研究実績の概要 |
2014年度は、大阪市大での2回の研究会、釜山大学校韓国民族文化研究所の研究者とのワークショップ1回、フランス・パリでの国際シンポジウム1回を開催することでき、大きな成果が上がった。 釜山大研究者とのワークショップは、韓国民族文化研究所と大阪市大の都市文化研究センターとの間で、今後の共同研究のあり方を討議する場として2015年2月に開催された。そこでは、本課題のメンバーが中心となって、グローバルな規模で展開する新自由主義の浸透による格差社会と社会的亀裂の問題を強く意識して、都市を舞台として展開する社会的諸矛盾を人・空間・文化の三局面から批判的に検証する共同研究を学際的に進める方向性が提起された。2016年2月に開催予定の国際シンポジウムに向け、2015年度に、調査論・研究方法論にわたる学際的共同研究を展開することが確認された。 また2015年3月の国際シンポジウムは、国内での2回にわたる準備研究会を経て、本課題のメンバーが企画し、開催した。パリのフランス国立社会科学高等研究院で、2日間にわたり開かれたシンポでは、パリと大阪について、近代~現代の都市下層(都市周縁)の存在形態と彼らをめぐる社会的諸関係について、歴史学と社会学の「方法的相互乗り入れ」を意識して積極的に議論が行えた。都市史や移民史の分野で著名なフランス人歴史学者・社会学者の報告を実現でき、日本側の研究報告に対しても広範な参加者の注目が寄せられ、きわめて有意義な場となった。歴史学と社会学の方法的な違いを意識した緊張感ある討議もなされ、①パリと大阪における都市周縁の実態の国際比較、②日仏の都市周縁に迫る視角や方法の共通性と差異、③歴史学と社会学の方法的な接触という三局面で、刺激的なイベントとなった。 本イベントでの各報告文は日本語・フランス語に翻訳中であり、2015年度に何らかの形での公表を目ざしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度は、年度末にフランスで開催された国際シンポジウムを最大の目標として、研究活動を展開した。国内の共同調査など、果たせなかった課題も少なくはないが、国際シンポに向けて開催した準備研究会では、歴史学(近代都市下層社会史)と社会学(都市貧困調査・在日コリアン研究)にわたる視点・方法の共通性と差異が明確になり、そうした論点が、フランスでの国際シンポ当日にも活かされるなど、系統的な研究活動を展開することができた。また、パリでの国際シンポそのものへも、予想以上にフランス側研究者や、異分野のパリ滞在日本人研究者の関心を呼び、積極的な参加と討議がなされたことも大きな収穫であり、2015年度の取り組みにもつながる成果が少なからず得られた。 他方、釜山大学校民族文化研究所とのワークショップも、2014年度こそは方向性の確認にとどまったものの、2015年度にいくつかの小チームに分かれて共同研究を進めることが合意でき、今後、本課題に関わる研究を、国際的・学際的メンバーで拡大しつつ展開できることとなったのは、大きな収穫であった。 以上のように、本課題において最大のイベントであったフランスでの国際シンポを成功させることができた点もふまえ、全体としては、おおむね順調な進展と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度となる2015年度は、主として釜山大学校民族文化研究所の近代史研究者との共同による調査・研究活動を主体として研究活動を進める。本課題メンバーが人・空間・文化の三つの小研究チームのそれぞれに積極的に参加し、本課題の主眼である都市周縁研究を切り口とした、学際的研究(とりわけ歴史学の近代都市史研究と、社会学の現代貧困問題・在日コリアン研究の相互乗り入れ)に取り組みたい。ここでの共同研究のフィールドは、日本と韓国に限定されるものではないので、日仏比較という論点も意識的に導入しつつ、共同研究を進めたい。最終的には、2016年2月に釜山で開催予定の国際シンポに、こうした共同研究の成果を結実させ、その後、これをふまえた国際的な共著出版への成果反映も目ざす。 あわせて、2015年3月のパリでの国際シンポジウムの成果をふまえ、①国際シンポの報告内容を何らかの形で公表することを目ざすとともに、②フランスの研究者との研究交流の場を大阪市大で設定することも検討し、パリと大阪をフィールドとする都市周縁の比較史的考察を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度末に開催した国際シンポジウムの逐次通訳費用と報告文の翻訳について、文学研究科の科長裁量経費によるプロジェクト推進経費の補助を受けたことで本課題による支出が抑えられたこと、また本課題の経費から支出予定だった同シンポのフランス側原稿の翻訳について、原稿が年度中に揃わず、発注、翻訳を2015年度事業として持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の大半は、国際シンポジウムフランス側原稿の翻訳料として使用し、若干の残額についても、国際シンポジウムの報告集公表に関する経費に充当の予定である。
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