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2013 年度 実施状況報告書

文化人類学における文化的ビジネス・スキル開発のための調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 25580184
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関京都外国語大学

研究代表者

佐々木 伸一  京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (30175377)

研究分担者 高島 知佐子  京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (70590404)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード文化人類学 / マーケティング / 嗜好のセグメント / 傾聴 / ジェネリック・スキル / 国際研究者交流 / アメリカ / イギリス
研究概要

本研究の目的は、文化人類学をマーケティングの分野と接合させ、文化研究をビジネス分野に通じるジェネリック・スキル開発の学とする試みである。
現在の日本での文化的に生成された嗜好のセグメントの在り方について、マーケティング分野では、一定の嗜好=定性的人々の集合について、どのように把握をし業務に結びつけているかを理解する作業から始めた。結果として風俗データベース的な「嗜好」のセグメント化は明確だが、それ以外はアットランダムで、製品ごとに異なる事情と日常の変化の速さゆえに、一定の「嗜好」へのターゲティングは、既存の定番商品群以外では無意味で、マーケティング会社での定量・定性調査のかなりのものが、クライアントである企業にとって企画承認手続きの、いわば儀礼化された事項に過ぎないことが判明した。
ただそういった状況はあるにせよ、定性調査での技法は、文化人類学で十分に意識されてこなかったフィールドワークの方法について、それを可視化する、あるいはそこからジェネリック・スキルを見出せるものであることが確認できた。それは例えば「傾聴」という能力である。これは企画開発会議でのファシリテイターとしての進行役といった単純な理解をはるかに超える可能性を秘めており、他者への共感・自己の記憶・語りの生成・さらにはクリエイティビティの入り口へとつながるという認識に至った。
フィールドワークを通じて生成される能力、あるいは人類学を学ぶことで得られるスキル、その全体像については未だにわからないことは多いが、欧米でのプロジェクトごとであるにせよ、人類学者ないしアンダーグラジュエイトですらのそれへの参画、すなわち雇用されている現状を目の当たりにして、本課題の大きな可能性とスキルの具体化についてある程度の目安を持つことができるようになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マーケティングリサーチ会社との対話、そこから得た発想を検討する研究会、そこで疑問や提案を投げかけてたどり着いた認識である。定性調査のプロの現場の方と人類学者、加えて経営学者と全く分野を異にする研究者を加える中でそれはもまれており、上記した実績については、それなりの信憑性があると考える。
加えて傾聴については、自分の授業で既に試行的に取り込んでいる。トレーニングの方法など明確な指針は定まらない試行錯誤的な試みだが、受講学生からの賛同を受け始めている。もちろん成果が具体的なのものとして出るのは先であり、現時点で結果は明言できないが、この技法を加えての過去のKJ法に基づく定性調査とのすり合わせにより、新たなリサーチ法を作るプロジェクトを、マーケティングリサーチ会社の同意を得て実施する運びになっていることからすれば、目的達成への進展がなされていると考えられる。

今後の研究の推進方策

ジェネリック・スキル開発の可能性について、それが無意味ではないことを確認できた一年であった。現在ではさらに、文化系大学のこれまでの教育そのものを問い直せる地点に至っているという認識がある。
ただそうであるにせよ、いまだ不明な点は多々あり、先に触れた文化人類学者の能力とは何かと問うことと、現場で実施されている定性調査におけるアビリティの可視化、あるいはその再開発を本年度の課題としたい。これに加えて、我々が創発的マーケティングとしたものに対して、経営学の側から文化開発論という類似のマーケティング戦略があることが判明した。それゆえこの知見を交えながら、文化を作るエイジェントという概念のもとに、情報を収集し、そのマッチングや編集により、新たなものを生成させるクリエイティビティの可能性を追求したい。

次年度の研究費の使用計画

初年度の計画では2名をアメリカへ派遣し、現地での人類学の教育システムと人類学者の雇用についてのリサーチを行う予定であった。しかし「ジェネリック・スキル」それ自体の概念がまだ曖昧な状態では、具体的な調査計画が立てられず、また広いアメリカでピンポイント的な調査を行わなければならないという資金状況もあり、これについては2年目の計画に組み込むことになった。
調査項目がある程度整理されてきた段階となり、また5月に日本で開催される国際文化人類学会の場で、アメリカの事情について現地の研究者から聞き取りを行う運びとなっている。これを踏まえてのアメリカでの調査を、本年度に実施する計画である。

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公開日: 2015-05-28  

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