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2014 年度 実施状況報告書

文化人類学における文化的ビジネス・スキル開発のための調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 25580184
研究機関京都外国語大学

研究代表者

佐々木 伸一  京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (30175377)

研究分担者 高島 知佐子  静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 講師 (70590404)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード国際研究者交流 / 文化人類学 / クリエーション / マーケティング / コミュニケーション / セグメンテーション / スキル / アメリカ
研究実績の概要

本研究は、文化人類学をマーケティング分野と接合させ、ビジネスの分野に通じるスキルを開発する試みを目的とする。そのため1、文化的に生成された嗜好について、マーケティング分野でどの程度の理解に達しているかの解明をはかりつつ、それをもとに2、そういった嗜好は、企業とそれをコミュニケートする広告代理店で生成されてきたと思われるが、この状況をエイジェント論等と重ねることを通じ、創発的な商品構築につながるビジネススキルを見出していければと考える。
1については、マーケティング・リサーチ会社での聞き取り調査他から、日本で文化的セグメンテーション(嗜好)に関し、その解明は指向されてはいるが、経営の状況や商慣行からさほど重視されず、企業にとって必要条件に必ずしもなっておらず、その進展さほどでない。質的調査について、エスノグラフィの応用が図られているが、ビジネス全体の中で限られた事象であることが明らかになった。
アメリカではビジネス・アンソロポロジーが、1980年代一部の学者により立ち上げられ、ビジネス環境の俯瞰的理解からコンサルティング業務へと参画する現状を知った。これが可能になった背景として、アメリカ移民社会の現場でセグメンテーション的なマーケティングが必要だった点と、社会組織論を企業へ応用する意識があったからである。
2の現場での創発的商品構築事例、アメリカのデザイン会社IDEOをでは、その現場に人類学者が加わっている。彼らは創発性に繋がるどのようなスキルを有するか。未だ解明できていないが、クリエーションにつながるスキル、フィールドで培われてきた人類学の、異なるものに価値を見出し情報的再構成を行う必要性から生成されるスキルという可能性が高く、もう一つは明確な言葉にできないが、「広義のコミュニケーション」と推定される現象に関係する事象であると、こういった認識段階に達している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、ほぼ何も見えない中で疑問点だらけからの出発で、1年目は何がどうなっているかを知ることで精いっぱいであったが、2年目を終え予想以上の理解を得ることができた。それと同時に、この研究がほぼ未開拓の「広義のコミュニケーション」という分野につながることが判明し、明らかにしなければならない問題の多さに気づき、結果として「おおむね・・・」という判断に至っている。
まず文化的セグメンテーションについては、現場状況の俯瞰的理解をベースにしながら調査をすればよいだけである。それは現代の都市社会で細分化された諸事象に対する、質的・量的調査の方法の改良でしかない。単に日本の人類学者がやってこなかっただけで、改善的なそのアプローチを考えればよい。アメリカのビジネス・アンソロポロジーで既に実践されており、経営学的実態把握にマーケティングを加えたものだからである。こういう結論を既に得ている。
他方「広義のコミュニケーション」諸分野で目的に応じて語られるコミュニケーション論を概括しその一元的理解を図る必要の重要さに気づいた。それはその研究を通じることでクリエーション能力への接近が図れる可能性を見出したからである。しかし、こういった研究は個別分野でそれぞれ進展はしているものの、全体としてほぼ未知の分野で、そのためこのような自己評価になった。

今後の研究の推進方策

まずはアメリカのビジネス・アンソロポロジーの事情について、大学教育での具体的な在り方ならびに、育成される人材像のモデルを確認したい。これに加え、ビジネス・エスノグラフィという工学モデル(マニュアル化されたそれ)に、対費用効果で勝る職人芸的なフィールド技術(情報の再構成を含めたそれ)を開発できるかの検討をおこないたい。
もう一点は、コミュニケーション関係の問題である。それに関わる様々な分野、その多くはその障碍をいかに克服するかという問題からの展開で、他方、社会の中で役立つ技法として企業新人研修から、セールス・販売などの言語技術開発としてのセミナーやビジネス本という世界まで広がる。これらは対人接触、態度表明、言語技術、多分オーバーラップするがこういった3つの要素で構築されると推測しており、その隠れた裏側にコグニションに基づくクリエーションへの鍵があるのではと思う。
こういった新しい研究領域の構築と、そこからの応用的な実践、前者とは全く位相が異なるが、こちらにも注力したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた、イギリスから大学院生を招き、彼らの目で見た京都土産のマーケテングならびに中国での商工人類学の状況視察、このいずれも、本年度のマーケティング・リサーチ会社とのコンタクトを通じての状況理解、またアメリカのビジネス・アンソロポロジーの事情を知ったことにより、研究計画全体の流れの中で、差し当たりの必要性は薄いと判断し中止したためである。

次年度使用額の使用計画

本年度のアメリカ調査でビジネス・アンソロポロジーについて一定の理解を得ることができた。ただそれらは日本とは異なるアメリカの労働慣行や職業選択の在り方、ビジネスの状況と深く絡むもので、再度の調査の必要性を感じ、再度訪米することにした。
本年度の調査は、AAA第113回大会のなかで開催された、NAPA(National Association for the Practice of Anthropology)主催の報告・ワークショップへの参加と、その間においてのインタビューであったが、次年度、9月に先端的なビジネスアンソロポロジーのカリキュラムを有する Wayne State University を主とする調査を計画しており、本年度繰り越し分もその費用に充てたい。なお訪問予定先からのインビテーションは既に得ている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 分科会、人類学教育と応答性―人類学者の再生産モデルを超えて2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信・佐々木伸一他5名
    • 学会等名
      日本文化人類学会第49回研究大会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪市)
    • 年月日
      2015-05-30

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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