研究課題/領域番号 |
25590123
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
|
研究分担者 |
牧野 圭一 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (90278507)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 一コマ漫画 / 自己組織化マッピング / 超高精細デジタル化 / 集合表象 / 時系列分析 / 鳥羽絵 |
研究概要 |
一コマ漫画を、時代の集合表象に対応したデータとして扱うための課題を検討し、以下を達成した。第一に、一コマ漫画に当たるデータがどの時代までさかのぼって収集できるのかを検討した。その結果、江戸期大阪画壇の作品までさかのぼって収集できることがあきらかになった。また、そのデジタルデータ化はほとんど未達成であり、これらのデータベースの作成を目指す本プロジェクトが萌芽的研究として意義あることが明確になった。第二に、デジタル化の手法には、さまざまな方法があり、大判のスキャナの利用や、日立製作所のデジタルイメージングシステムの利用などが可能であることが明らかになった。近年の一コマ漫画については、スキャナを利用したデジタル化が可能であるが、古い資料については、強い光での作品への損傷が懸念されることから、日立製作所のデジタル・イメージング・システム(DIS)の利用が望ましいとの検討結果となった。この検討を受けて、一コマ漫画の試験的スキャナ作業を進めるとともに、大判の画像の超高精細デジタルコンテンツ化の試験を行うことにした。後者については、約2m四方の大正期商業者地図(関西大学STEP所蔵)を対象に試験を行い、数十倍に拡大しても画像が粗くならないという結果を得た。この方法の適用可能性は高いが、コストも上昇することから、スキャナと並行利用し、適宜、手法を選択し最適なデータベース作成が可能となった。第三に、自己組織化マッピング法については、そのアルゴリズムが比較的容易である一方、Rなどの既存のプログラムでは、本研究のようにケース数が多い場合、メモリーの容量の問題が生じるため、独自のプログラム作成の必要性が明らかになってきた。この点については、Objective-CやJava Scriptでのプログラミングが具体的に検討されており、その試験が一部完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅延をきたしている理由は以下のとおりである。第一は、読売新聞国際漫画大賞のデータが、当初の予想以上に散逸しており、利用の交渉に慮外の時間を要していることである。第二は、時系列でさかのぼれる限界時点の見極めを行ったところ、明治期を超えてさかのぼれることがわかり、一コマ漫画の歴史的展開が、既存の漫画研究とは異なる様相を呈してきたためである。ただし、この点については、デジタル化の具体的実現との兼ね合いでほぼ見極めが完了しており、今後の進展の速度上昇が望める。第三は、日立製作所のDISなど、近年の技術進歩の速さによる新展開があり、それらが身近な利用技術となってきたためにその試験の必要が生じたことである。ただし、古い貴重な資料に悪影響を及ぼすことなく超高精細デジタル化できることが判明し、大きな前進があったと考えている。第四は、実際に、試験データに自己組織化マッピング法を適用すると、既存プログラムの限界があり、そのまま利用することが困難なことが分かり、独自の開発という課題が発生したことである。この点についても、解決の見通しが平成25年度中についており、平成26年度の早急な展開が見込める。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、読売国際漫画大賞、オホーツクマンガ大賞、千曲漫画館の所蔵する一コマ漫画のデジタル化に加え、江戸期の鳥羽絵までも対象にして研究を推進するとともに、自己組織化マッピング法による自動分類と、人間によるKJ法的な分類結果を比較する。これをもとにして、時系列的な社会的表象に対応するデータを作成し、政治状況、経済状況、社会状況と対比をしながら、このデータの有効性を検証する。 また、自己組織化マッピング法の適用においては、独自のプログラミングが必要になる可能性があるが、こちらについては、すでにJavaでのプログラミングのめどがつきつつある。さらに、高精細なデジタル画像の表示や解析のためには、4Kまで対応するディスプレイをもつPCが必要となるが、それらに関しては、すでにPanasonicとの交渉で最新のスペックのものが利用できることとなっている。 時系列分析に関しては、ARIMAモデルの適用を今後検討していくが、こちらについてSPSSでの研究実績があり、情報の縮約に有効であるとの見通しを抱いている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた一コマ漫画コンテンツが予定以上に散逸しており、その整理に時間がかかったためデジタル化の作業の進展に遅延をきたした。また、一コマ漫画コンテンツが江戸期までさかのぼって作成できる見込みがでてきたため、その情報整理とコンテンツの入手手続きに時間がかかったために、作業の進捗計画を見直した。さらに、高精細デジタル化の方式が、スキャナ方式と写真撮影方式の二つの競合があり、その特質の見極めてに時間がかかった。 上記の3つの理由から、高精細デジタル化の作業計画を見直し、結果、次年度使用が生じることとなった。 高精細デジタル化を、スキャナ方式と写真撮影方式の二通りの平行作業ですすめることとし、今年度中に当初の研究計画の予定通りの作業をすすめて、分析をおこなう。 超高精細デジタルコンテンツ化については、日立製作所と連携しながら技術的な適応を検討してきており、日立製作所への依頼を含めて、使用することを計画している。 また、スキャナ方式については現代の作品のみに限って起用し、日立製作所への依頼と並行しながら、信頼できる業者への委託を予定している。
|