本研究は、漫画データを時系列的な集合表象把握のデータベース化するための方法開発を目的とし、その有効性の検証を目論んできた。分析方法としては、自己組織化マッピング法を用いることとし、まずは言語データについて、その有効性を確認するためにホームレスの聞き取りドキュメントを実験的な分析対象とした。統計解析言語Rを用いた分析の結果は、タイニーテキストマイナーなどで「語」単位に切られたデータそのものから、対象の意味ある近接性を自動的に識別することは困難であり、分析者が他の評価軸をそのうえに重ねられるようま形式でデータセットを作成することの重要性が確認された。この知見をもとに、一コマ漫画データを自己組織化マッピング法を用いて評価するための、評価シートの開発の重要性が認識され、その開発が展開した。 また、上記の方法を実践的に適用するために、北海道紋別郡湧別町が実施してきたオホーツク国際漫画大賞受賞作品について、その電子化の方途を、前述の行政の管理者とやりとりしながら調整することとなった。また、その前段階のパイロット的研究として、同館も1000点以上を所蔵する牧野圭一氏の過去の作品群のうち、一コマ漫画の原画についてデジタル化を行い、約230点について1200DPIの超高精細デジタル画像化を行った。このデータについて、タグを前述の評価シートにしたがって作成するデータベース化の作業を進めた。 助成期間終了時では、時代効果と自己組織マッピングの結果に鮮明な対応関係が見いだせてはいないものの、方法的には方向性が確立しつつあり、また、オホーツク国際漫画大賞応募作品のような膨大な蓄積に対して、方法を実践的に適用し、その有効性を確認する道筋が開かれた。本方法は、これまで開発されてこなかったものであり、今後の適用についてその対象の拡大が期待できるものとなっている。
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