研究課題/領域番号 |
25590142
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
梶原 洋生 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 准教授 (00382797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 家族 / 介護 |
研究概要 |
裁判員制度施行後について、介護疲れ等が事件の背景に存する場合、事情を酌んで執行猶予がつく割合が増してきたことはよく知られている。平成24年7月30日には、家庭内事件について求刑16年を上回る懲役20年の大阪地裁判決に触れた。被告は発達障害者であり、「家族介護」の将来的な展望が見えないことは上乗せの主たる理由と考えられた。 しかし、介護福祉学では、家族によった介護は自然と限界に達するかのように自明の前提にしてきたきらいがある。結果、そのような状況を探る研究が不足してきている。家庭内の限界状況について実態を明らかにする研究はあまりなく、特に発達障害関係の「家族介護」について限界状況を知る研究はその実績が重視されるべきと考えられた。そこで本研究では、「家族介護」の限界状況をリーガルアプローチから検討した。発達障害に係る「家族介護」の事件群を対象に精査し、一連の事件化の経緯を明らかにする。これにより、発達障害に係る「家族介護」の事件群に潜む、通底した困難を浮かび上がらせられれば、今後の研究に期待できる。今年度は平成25年度までにまとめた研究成果を精査したうえで、発達障害に係る刑事裁判例・審判例群の動向を把握し、家族介護の困難から事件化の素地に結び付いた事案の研究を実施した。 実績としては、我が国において介護の苦労に限界感を有すると目されてきた「家族介護」の実態を知る以下の知見獲得であった。1、政府公刊資料等を用いて裁判・審判の例を調査した。2、法律情報データベースを用いて、事案の抽出を行った。3、最高裁判所判例検索サービスを用いて、事案の抽出を行った。4、特に家族介護の困難を示唆する部面を整理し、考察を試みた。これらで得られた「家族介護」の群像から改めて社会生活の課題等を再確認できると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、「家族介護」が限界に達することは、その人的資源論において当然視されるが、なかでも、発達障害に係る介護の限界については、事件の例が相当数見つかった。その知見を得られたことは研究計画で期待した成果に相応しく、概ね順調に進展していると思料する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては、限界事例の発展させた考察が重要と考える。事例の抽出により、家族介護の困難を示す要素を調べ、検討と考察を試みるとともに、その結果によって得られた家族介護の時系列的な関係変容や時代性等について考察を行うる。具体的な方法は以下のとおりである。1、事例の収集・補強とその整理を行う。2、判決の考察等を行う。3、家族介護の困難を示す要素をさらに深めて考察する。4、時代性等との関連を考察のヒントに加える。5、発達障害の特性に準えられる家族介護の利害得失について、考察を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
事例の収集とその適切な理解のために関係資料を取り寄せてきたが、次年度にまたがる考証の部分で情報収集等の研究過程が発生したため、やむをえず、それに充当する相応な費用を繰り越すこととなった。 事例検討に向けた考証のための情報収集に必要な次年度の研究過程において、それに該当する相応な費用として適切に支出する。
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