研究課題/領域番号 |
25590142
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
梶原 洋生 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 准教授 (00382797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発達障害 / 事件化 / 家族 |
研究実績の概要 |
これまでにまとめた研究成果(<文部科学省科学研究費補助金若手研究(B)研究課題名「介護専門職におけるパラリーガルとしての役割と業務に関する研究」>並びに<文部科学省科学研究費補助金若手研究(B)研究課題名「介護専門職におけるパラリーガルとしての方略とスキルに関する研究>を再検証した。そのうえで、糸口につながるような視点を形成するべく、発展的に精査した。とくに発達障害に係る刑事裁判例・審判例群の動向を調査し、家族介護の困難から事件化の素地に結び付いた事案を抽出するための研究を実施した。このより具体的な方法は、以下のとおりである。①政府公刊資料等を用いて裁判・審判の例を調査する。②法律情報・判例搭載資料等を用いて、事案の抽出を行う。③最高裁判所判例検索サービスを用いて、事案の抽出を行う。④とくに法制度上の課題に次つながるステイクホルダーの実相について考察した。 つぎに、上記の事案抽出により、家族介護の困難を顕示する様相を収集してステイクホルダー分析に付した。このより具体的な方法は、以下のとおりである。①データの構築的な補強を行う。②ステイクホルダー分析の手法を応用して分析を行う。③補正的分析作業として現代史的な原資料に当たる質的調査を行う。④家族介護の困難を顕示する事案を検証する。⑤発達障害の特性に準えられる家族介護の利害得失について、利益衡量の準則を検討する。 これらを通じて家族の限界を知り、解決の糸口を探る視点の一つに、その悲壮感と無力感、徒労感は大きいと知ることができた。この成果は改めて我々に社会的な関与の制度設計と他者理解の技法を問うものであり、本研究でも知見の柱にすべき理解だと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、訴訟や争いの資料を原資として、そのコンテンツに潜む事件化の素地や解決への糸口を探るため、情報の獲得状況や考察的な活動状況が重視されねばならない。この点、おおむね計画通りに進行しているものと考える
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今後の研究の推進方策 |
今後は、分析の結果得られた家族介護の利害得失について、利益衡量の準則を検討できるように、また、その一般化が詩論できるように、計画通り推進する。 裁判・審判の例が比較的検索しやすいこの障害関連に着眼することで、一般化が可能な現実論を試みられると考えている。しかし一方で、発達障害に係る家族の苦労は独特であり、事件化もその障害ならではとみなす見解もありうるところである。本研究はとある障害特性に犯罪傾向を認めようとするものではない。発達障害者とその家族における濃厚な人間関係や家庭内での人生関与の現実を反射的に描き出し、改めて理解しなおそうとするものである。本研究の目的内では刑事法関係の事案を中心にあたることが効果的である。ただし、様々な法的課題が見え隠れする限界状況では、他の福祉法制に関する論点なども参照が有効である。言質の理解にインタヴューの内容を活かす部面も、法社会学的な方法論を応用した本研究の工夫である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計画通りの研究を遂行したが、年度末に消耗品購入に若干余した。
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次年度使用額の使用計画 |
若干余した消耗品費の分は、次年度に当然必要となる出費であるから、これに見て、順当に執行していく計画である。
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