我が国では高齢社会の到来を挙げて「介護」の重要性は増して来たと指摘されることも多く、介護保険法を利用するサービスもその他のサービスも様々に存在している。そういった時流の中で、時代を語る専門家の切り口は前向きな主張として「支援」の必要性を論じ合っても来たようだ。そして、家族も社会も、「家族介護」が限界に達することはある意味で当然視しているかのように見えなくもなかった。 そこで、その家族介護の実態を探る研究を行うこととした。特に発達障害に係る介護の限界については、将来への家族の不安も多々あろうが、多面的に扱う研究は見当たりにくく、定かではなかった。こういった障害関係で苦労する家族の限界について、そこに達するさまを現実的に調べ、内容をとりまとめて掘り下げることとした。 これらの中で得られた情報は、事例発表者の体験を加工したもの以外に、実際の刑事裁判・審判の例から得られたものもあった。関係者は社会福祉・社会保障の各制度における多様なステイクホルダーでもあることから、重複的なサービス利用者などの現状といった内容を総合化するために幅広く取り入れて検討を加えた。 上記の過程で、家族の限界から事件化に結び付いた事案を見出し、事件の経緯ときっかけ、紛争化の理由となった要素を探索した。また、得られた理論的検討の結果を用いて、家族間に存する利害得失について考察を深めた。 今後、介護福祉研究においては、発達障害関係の家族介護という論題も増えると思われるので、本研究の内容をその端緒と位置づけられるように一層積み上げたい。
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