研究実績の概要 |
研究代表者は代数的組合せ論の重要な研究対象であるアソシエーション・スキーム(AS)を圏論的観点から一般化し, (擬)スキーモイドの概念を提案した。系統的なスキーモイドの構成を幾つか与え, その後, Hoff, Leeによる小圏における強ホモトピー関係を用いてスキーモイドの圏でホモトピー論を展開した。結果として, 擬スキーモイドのつくる圏 qASmd には2-圏の構造が入り, 離散スキーモイドを構成する関手により, 小圏全体が作る圏 Cat はその2-圏に埋め込まれることがわかった。ホモトピー不変量として, 自己ホモトピー同値写像がつくるモノイドをホモトピー関係で割ることで得られる群(自己ホモトピー写像群)を導入した。 自明な分割を持つASを擬スキーモイドと見なすとき, その自己ホモトピー写像群は基礎集合の濃度が3以上ならば巡回群となり, 濃度が2のときは自明群となることを示した。また有限群から来る, 擬スキーモイド上の自己ホモトピー同値写像は結局, 同型写像となることがわかる。こうして有限群をスキーモイドとみなし, Catの対象と考えた場合は可縮になってしまうが, qASmdの世界では可縮ではない非自明な対象となる。亜群から定義されるスキーモイド上のホモトピー関係を詳細に考察することにより, その亜群の自己同型群から亜群から得られるスキーモイドの自己ホモトピー写像群へ単射準同型が存在することを示した。これらの結果は, Catでは検出できない, ホモトピー論的性質が qASmdには存在することを示していることになり, スキーモイド研究において重要な意味を持つ。 一方, アソシエーションスキーモイドの圏(ASmd)にも強ホモトピーを定義するため, 2つの対象と唯一の非自明な射を持つ圏に自然にスキーモイドの構造を入れASmd上で強ホモトピーを定義した。このホモトピー関係は結局, 恒等関係と同じになるという結果も得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
強ホモトピーを用いた擬スキーモイドの考察を進めるため, はじめホモトピー不変量としてHoff流のホモトピー群を定義することを考えたが, 定義域の小圏に与えるスキーモイド構造が複数あるため, この方針を採らず, 自己ホモトピー写像群を導入した。思った以上にその群の性質の解明が進み, 上述のように重要な結果を得ることができた。qASmdにおける, 有限群, 亜群のホモトピー論的硬性が明らかになったことは特筆に値する。結果は論文としてまとめられた。
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今後の研究の推進方策 |
圏論的表現論的視点からスキーモイドのBose-Mesner代数を考察するため, その代数に同伴する係数を用いて, スキーモイドの基礎圏のBaues-Wirsching コホモロジーを考察する。このコホモロジーの具体的な計算を研究協力者と共にMayer-Vietorisスペクトル系列を適用して行う。さらに, qASmdにおける関手圏Funcの性質を解明することで, "スキーモイドコホモロジー(導来関手)"をどのように定義するか考察する。その指針としては, 有限群から得られるスキーモイドを考える場合, 通常の有限群のコホモロジーとなることを要請する。関手圏とBose-Mesner代数上の加群圏とのMitchell対応や, 考える関手圏でKan拡張が閉じるかどうかをまず考えることから始める。また次年度は研究が最終年であることから, (代数的)組み合せ論とホモトピー論的手法の融合をさらに進める計画である。より具体的には関手圏Funcがアーベル圏であることから, そのチェイン複体の圏に入るモデル圏構造を詳細に考察し, スキーモイドコホモロジーの性質を探る。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力者の旅費補助分と, 自身の出張旅費および本研究に関連し企画開催するセミナー, 勉強会, 研究集会の講師旅費等に使用する。また平成27年度請求額とあわせて, 研究に必要な図書, 特に代数的組合せ論, 抽象ホモトピー論関連の図書と資料整理に必要な物品の購入費にも本経費を使用する予定である。
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