泥炭中に残されている植物遺骸のセルロースの酸素同位体比を分析することにより,降水の酸素同位体比に関する情報を得る手法を確立した.植物遺骸を8種類前後に形態別に分け,それぞれについてリグニン分解を行い,セルロースを精製し,その酸素同位体比を測定した.ミズゴケの酸素同位体比は3000年前から2000年前にかけて負方向にシフトし,降水酸素同位体比が軽くなったことが示唆された.植物片とミズゴケの酸素同位体比の差は,2000年前でもっとも大きく,相対湿度が低かったことが示唆された.これらの結果は花粉組成から推測される環境変化と調和的であった.
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