研究課題/領域番号 |
25630119
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
成田 克 山形大学, 理工学研究科, 助教 (30396543)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 立方晶炭化ケイ素 / ダークマテリアル |
研究概要 |
これまで立方晶炭化ケイ素(3C-SiC)をSi(100)基板上に堆積させてきたが,初年度は自然酸化膜付Si(100)基板上へのSiC膜堆積を行った.堆積時間を5時間に固定し,堆積温度を変化(760-900℃)させてSiC膜堆積を行ったところ,すべての堆積温度で黒っぽい膜が得られた.堆積温度が高くなるにつれて膜厚(堆積速度)の増加が見られたことから,自然酸化膜上でもSiC膜の成長様式は表面反応律速過程であった.XRD測定の結果,900℃のみSiC(100)が強く配向した多結晶膜が得られ,それ以外はSiC(111)が強く配向した多結晶膜であった.900℃でのみSiC(100)が強く配向した理由は,SiC膜堆積初期に表面を覆っていた酸化膜の一部が完全に脱離して基板のSi(100)が露出した表面でSiCがエピタキシャル成長したためであると考えられる.FTIRを用いてSiC膜の透過率測定(測定範囲:400-4000cm-1)を行ったところ,一般的なSiCのスペクトルでは唯一795cm-1にSi-C結合のTOフォノン吸収が見られ,その他の赤外線は透過するはずであるが,今回得られたSiC膜では,堆積温度が高くなるにつれてTOフォノンピークの半値幅は増大し,さらに透過率が全体的に減少した.驚いたことに,850℃以上で堆積したSiC膜はこの測定波長範囲の赤外線を一切透過しなかった.SEMを用いて表面を観察すると,堆積温度が増加するにつれて表面粗さが増大していたことから,この表面粗さが赤外線を透過させない原因ではないかと考えている.これらの結果は本研究では好ましく,現状でダークマテリアルにかなり近い性質のSiC膜が出来ていると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
より詳細な成長メカニズムを解明するための実験装置を新たに構築しているため,SiC膜表面からの水素脱離バリアの評価をまだ行っていないが,その他は当初の実施計画通りに順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在構築中の水素脱離バリア評価システムにより,SiC表面からの水素脱離のバリアを測定し,この観点から成長メカニズムの解明を行う.さらに光学特性や構造解析を行い,ダークマテリアルとなりうるSiC膜堆積条件を見出す.
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次年度の研究費の使用計画 |
水素脱離バリア評価システムで使用する水素ガスの購入が遅れたため. SiC膜堆積に必要な原料ガスやその他の消耗品の購入に充てる.
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