本研究では、抗がん剤及び抗がん剤の耐性克服剤の開発を目的として、JARID1Aに対する阻害剤の同定とそれらが開発コンセプトに合致した薬理活性をもつことを証明〔POC (Proof of Concept)〕することを課題としている。 これまでに、抗がん剤の耐性克服剤開発のPOC系として、分子標的抗がん剤であるGefitinibに対して薬剤耐性を獲得した細胞株を取得している。さらに、薬剤耐性獲得株で発現抑制が確認された遺伝子群から、JARID1AのRNA干渉による発現抑制により、RNA発現量の上昇を確認できたTissue factor pathway inhibitor 2 (TFPI2)を薬効バイオマーカー候補遺伝子として選択した。TFPI2遺伝子の転写制御領域を連結したルシフェラーゼレポーターを導入したHEK293細胞を作製し、JARID1AのRNA干渉による発現抑制により、ルシフェラーゼ発現量の上昇を確認できたクローンをJARID1A阻害剤の細胞レベルでの評価系とした。前年度にJARID1Aに対する酵素阻害剤の同定のために、3万化合物のHigh-throughput screeningを完了させ、約200化合物の1次ヒットを取得している。これらのヒット化合物を本評価系に供した結果、レポーター発現を亢進させる、すなわち細胞レベルで有効な化合物を35種取得することに成功した。本年度得られたこれらの細胞レベルで有効な化合物は今後のJARID1Aを標的とする抗がん剤及び抗がん剤の耐性克服剤の開発の重要なリード化合物として期待が持てる。
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