研究課題
挑戦的萌芽研究
遺伝子の転写や翻訳の実態が詳らかになると、多くの遺伝子がde novoに生み出されていることが明らかになった。ここでは、遺伝子のde novo誕生の機序に迫るバイオインフォマティクス研究を展開する。そこで、まず、モデル生物の祖先ゲノムについて、遺伝子がde novoに誕生した領域を同定する。次に、さまざまな視点から、それらの領域を特徴付けるとともに、特徴間の因果関係を推定する。そして、それらの特徴をモデル生物の間で比較し、de novoに遺伝子を生み出したゲノム領域の種を越えた共通性と種に依存した特異性を明らかにする。さらに、それらの特徴に基づいて、遺伝子のde novo誕生の予測が可能かどうかを検証する。平成25年度は、出芽酵母をモデル生物にして、モデル生物の祖先ゲノムを推定し、de novoに遺伝子が誕生したゲノム領域を塩基レベルの解像度で同定した。次に、それらの領域を染色体や塩基のレベルで特徴付けるとともに、特徴間の因果関係を類推することで遺伝子のde novo誕生の機序を考察した。さらに、上述の特徴に基づいて、遺伝子のde novo誕生の予測が可能かどうかを検討した。以上により、出芽酵母では既存の遺伝子に重複した形で遺伝子がde novoに誕生する傾向があること、そこでは、ORFが遺伝子間領域に向けて伸長する傾向があることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
出芽酵母についての解析を一通り終えたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。ただ、以下のような検討課題も明らかになった。出芽酵母は、思いのほか進化速度が速く、遺伝子のde novo誕生前後の祖先ゲノム配列の推定が難しい。そこで、推定の信頼性の高い領域だけのde novo遺伝子誕生に絞ると、サンプル数が数十に減ってしまった。この問題を解決するために、より精密なゲノム配列のアラインメントを行なうことで、祖先ゲノム配列の推定の信頼性を改善しようと考えている。
出芽酵母をモデル生物にした研究が一段落したら、キイロショウジョウバエやヒトをモデル生物にした研究に着手する。加えて、de novoに遺伝子を生み出したゲノム領域の特徴をモデル生物の間で比較して、それらの領域の種を越えた共通性と種に依存した特異性を明らかにする。これらの試みが順調に進めば、遺伝子をde novoに生み出すゲノム領域の予測に関して、進化実験による検証を計画する。
仕様を満たす計算機消耗品の発売が次年度にずれ込んだため、今年度の購入を見送った。仕様を満たす計算機消耗品が発売され次第、速やかに購入する。
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Mol Cell
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