(1)アルカリ性水耕液でも十分に根を伸長させるオオムギと伸長が抑制されるトマトで根先端の組織を観察したところ、オオムギではアルカリ性水耕液に移植後24時間前後に遷移領域が拡大していた。これに対し、トマトでは時間とともに緩やかな伸長領域が拡大しており、各細胞の伸長が遅れていることが予想された。細胞周期関連遺伝子の発現パターンを調べたところ、オオムギでは主要なサイクリンとサイクリン依存性キナーゼの発現、および細胞周期から脱して分化に移行するのに関わるFZRの発現がアルカリ性水耕液によって増加していた。これに対し、トマトではこれらの遺伝子の発現は水耕液pHによって変化しないかむしろ減少していた。 (2)オオムギとトマトの根伸長領域から原形質膜を精製しH+-ATPase活性を測定したところ、どちらの植物でもアルカリ性水耕液によって活性が有意に増加したが、増加割合はオオムギの方が大きかった。 (3)アルカリ性水耕液がトマトの植物ホルモン含量に及ぼす影響は前年度までに得られているオオムギの結果とは全く異なることが分かった。 (4)オオムギでRNA-Seqを行い、アルカリ性水耕液への移植により発現が変動する遺伝子を検索した。根の分裂領域・遷移領域、および急速な伸長領域で発現が上昇もしくは減少した遺伝子が多数見つかった。
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