研究課題/領域番号 |
25660091
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
増口 潔 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (00569725)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物ホルモン / オーキシン / アミノ基転移酵素 / フラビン含有モノオキシゲナーゼ / 生合成 / インドール酢酸 |
研究概要 |
本年度は, 天然オーキシン (インドール酢酸, IAA) 生合成の制御機構を主に生化学的な手法によって解析し, 以下の結果を得た。 1. 生化学的な解析 (1) モデル植物シロイヌナズナに11個存在するYUCCAのうち、進化系統樹的に異なるグループに属する5つのYUCCAタンパク質の酵素特性を調査し, YUCCAファミリーは総じてTrp由来の2-オキソ酸であるインドールピルビン酸だけではなく, 同じ芳香族アミノ酸であるPheやTyr由来の2-オキソ酸に対しても親和性を示す (=基質特異性の緩い) 酵素である事を明らかにした. (2) TAA (TAA1) とYUCCA (YUC1) のリコンビナントタンパク質を用いて, IAA生合成を試験管内で再構築した. 本系のTrpに対する親和性は非常に高く, 種々のアミノ酸が混在する条件下でもTrp を基質にIAAが選択的に合成された. さらにin vitroで得られた結果は, 植物体を用いたホルモン分析によって妥当性を確認した. 現在, YUCCAとの共存がTAAのTrpに対する親和性に及ぼす影響について詳細な解析を進めている. 2. 分子遺伝学的な解析 (1) TAA及びYUCCAを恒常的もしくは自身のプロモーター制御下でレポータータンパク質やタンパク質タグとの融合型タンパク質として発現する形質転換植物体を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リコンビナント酵素タンパク質を用いた生化学実験では, オーキシン生合成経路の試験管内再構成系において興味深い知見が得られるなど順調に進行した. 一方, TAA及びYUCCAの細胞内/組織レベルでの局在解析については形質転換植物体ラインの確立が遅れたため, H26年度に実施予定である.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の結果は, TAAとYUCCAによる協調的なIAA生合成機構の存在を示唆し, IAA生合成は「TAAとYUCCAの細胞内及び組織での共局在を介して行われる」というアイデアを支持するものであった. 今後は, 植物体内で時空間的に同時に存在するTAAとYUCCAがIAA生合成を活性化し, 生理的に重要な役割を担っているという証拠を得る必要がある. H26年度は, H25年度に作出した形質転換植物体を用いてTAA及びYUCCAの細胞内/組織レベルでの局在解析を実施する. 同時に自身のプロモーター制御下で蛍光タンパク質との融合型タンパク質としてTAAやYUCCAを発現する植物体の掛け合わせを行い, TAAとYUCCAを同時に可視化する植物体の作出を目指す. この実験では, 観察が容易かつIAAの輸送・情報伝達部位に関する知見が蓄積している根を用いる予定である. 問題点として, TAAあるいはYUCCAファミリー内のタンパク質の細胞内局在が異なる場合が想定される. この場合, 細胞内局在が同じ/異なるTAA-YUCCAの組み合わせで各々の過剰発現植物体を掛け合わせ, それらの表現型や内生IAA量を測定することなどで, TAA/YUCCAの細胞内局在の相違がIAA生合成に及ぼす影響を議論できると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の未使用額は, TAA及びYUCCAの局在解析に必要であると考えていた免疫抗体の作製予算として計上していた. しかし, 中川強博士 (島根大学) によって開発されたGatewayバイナリーベクターの使用により, 蛍光タンパク質やタンパク質タグを付加したTAA及びYUCCAタンパク質の発現植物体が簡便かつ効率的に作出できたため, 免疫抗体の作製を見送っている. さらに旅費として中国 (上海) で行われた第21回国際植物生長物質会議への参加を計画していたが, 研究の進行状況から参加を取りやめた. 付加タンパク質によって目的タンパク質の正常な酵素機能や局在が阻害される可能性もあるため、その場合には当該の未使用額により免疫抗体を作出したい. またH26年度は, H25年度に得られた結果の論文誌上発表と国際・国内学会での成果発表を計画しており, 当該予算を充てる.
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