研究課題/領域番号 |
25660105
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷 史人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70212040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食品コロイド / 流動特性 / ずり応力 / 物理的刺激 / P2X受容体 / 細胞内カルシウム応答 / フローチャンバー流路系 |
研究概要 |
本研究の目的は、食品コロイド分散系の粘性流動や幾何学的特性の物理的刺激が口腔内などの消化管内にてどのように受容されるのか、また、味物質などによる化学的刺激との相互関係について細胞レベルにおいて明らかにすることである。平成25年度は、まず、血流のずり応力に血管内皮細胞が応答する現象をモデルに、食品からの物理的刺激に応じる細胞応答を評価できるフローチャンバー流路系を構築した。倒立型蛍光顕微鏡の観察テーブルに、細胞を潅流できる平行平板型フローチャンバー流路系のデバイスを設置し、流路系を一定の温度37℃にする恒温装置を備え付ける。シリンジポンプにて送液し、フローに対する細胞内の蛍光変化の様子をCCDカメラで観察し、コンピュータによる画像処理で評価した。血管内皮細胞はずり応力に対して細胞内カルシウム動員を起こすことが知られているので、そのずり応力を感知する受容体であるP2X4プリンヌクレオチド作動性受容体を発現させたHEK293トランスフェクタントを作製した。ヒトP2X4受容体をコードするcDNAをpcDNA3.1(+)動物細胞発現用ベクターにサブクローニングし、リポフェクション法を用いてHEK293の安定発現株を得た。Fluo-8カルシウム蛍光指示薬を細胞に導入しフローチャンバー流路系にセットし、流速を段階的に上昇させ細胞内蛍光量を観察したところ、無処理のHEK293細胞はフローに対して蛍光を示さなかったが、トランスフェクタントはフローに対して蛍光を発した。この応答は、EGTA存在下において消失した。 次に、消化管由来の株化された内分泌細胞にずり応力応答性のP2X4受容体が存在するか否かについて解析した。ヒトNCI-H-716細胞を用いてRT-PCRを行ったところ、P2X4受容体を示すバンドが観察され、内分泌細胞がずり応力を感知できる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倒立型蛍光顕微鏡と平行平板型フローチャンバー流路系を組み合わせて、食品からの物理的刺激に応じる細胞応答を評価できる測定系を構築できたのは予定どおりであった。しかし、トランスフェクタントを含めて幾種類かの細胞ではスライドガラスへの付着性が乏しく、ずり応力を供すると観察以前に細胞が剥がれることが多い。そのため、スライドガラスのゲルコーティング処理の工夫を施すのに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞応答は、細胞内カルシウムの消長をFluo-8カルシウム蛍光指示薬を細胞に導入することで観察しているが、Fluo-8指示薬を細胞に導入する段階で剥がれ易いので、細胞内カルシウムに反応して蛍光を発するタンパク質を安定的に発現HEK293安定発現株を作製することで効率を高める。平成26年度は、NCI-H716細胞のほかに、マウス口腔粘膜上皮細胞シート、消化管由来のタフト細胞のLIM1863細胞や微絨毛を形成するCaco-2細胞を取りあげる。溶質の流動特性、形状やサイズが異なる様々なコロイド分散系を流し、粘性や幾何学的特性に対する細胞内カルシウム応答を蛍光顕微鏡観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞応答は、細胞内カルシウムの消長をFluo-8カルシウム蛍光指示薬を細胞に導入することで観察しているが、Fluo-8指示薬を細胞に導入する段階で剥がれ易いので、この操作ステップを再検討する必要が生じたため。 細胞内カルシウムの変動を、Fluo-8カルシウム蛍光指示薬のほかに、細胞内カルシウムに反応して蛍光を発するタンパク質を安定的に発現させたHEK293安定発現株を作製することで効率を高めることを試みるための試薬に使用する予定である。
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